もんじゃ再び
「お前が途中で勉強止めるなんて、よっぽど腹へってたんだなっ」
「鈍感……」
「あーまあ……ていうか勉強になってなかったし」
「確かにな」
「?」
「あんた達も、嬉しそうだしね」
「「……」」
結局放課後、もんじゃを食べに行くことになった。その道のりの途中。ハルは立ち止まって水谷をじっと見つめていた。
水谷がなに? と問いかけると、ハルは彼女の襟首を引っ掴んで引き寄せた。よからぬ予感がする。俺は思わずハルへと手を伸ばした。
「……なにすんだよ、亜希」
「お兄ちゃんの前でそんなことするんじゃないっつってんだろーが。つーか今少し触れただろ。俺が止めなきゃ、ぶっちゅーってしてたろ」
「焼きもちか?」
「あー、ハルが盗られちゃうからかもなー、なんて」
けらけらと笑う俺とハル。ハルが水谷にキスしようとしたとき、俺は伸ばした手でハルの頭を引っ掴んで止めたのだが、遅かったみたいで少し触れてしまっていた。なんだかもやもやする。何でだろう。少し首を傾げた。
「でもおかしいんだよなー」
「何が?」
「ドキドキしねぇ」
「は?」
「アレー? なんでだ? こないだも思ったんだけど、俺、全然お前にときめかねぇ」
「………は………?」
「水谷、大丈夫か?」
水谷は顔を真っ赤にさせてよろける。少しだが触れてしまったから、だろうか。俺はそんな水谷の身体を慌てて支えた。ハル、担任から借りた愛読書なんか真面目に読んでやがる。偉い、とほめるべきか。だが、よからぬことしでかしてるしなんとも……。
「なんでだろなー。まえはあんなにドキドキしたのになー。あっでもシズクのことは大好きだぜ!」
ハルはハハハ、と笑いながら言う。触れてるからだろうか。水谷の心臓がバクバク言いっぱなしなのが分かった。哀れ水谷。そんな水谷を置いて、はやく行こうぜー、とハルは歩いていってしまった。やだもう、俺恥ずかしいんだけど。
もんじゃがどんなもんじゃい。なんやかんかあったが、とりあえず店についた。もんじゃのいい香りが漂っている。
「すみません、ベビースターもんじゃと明太もちと海鮮チーズもんじゃ!!」
「あ、俺も海鮮チーズ食べたい」
「海鮮チーズ2つ!!」
「………すげーなおまえら……」
「腹へってんだよ」
「うるさい! これが食わずに居られるか!」
水谷は先程あったことを誤魔化すかのように、次々といろんなもんじゃを頼んでは腹に入れていた。やけ食いってやつだ。男の俺等より食べるって……すげーな。ていうか、太るぞー……なんていったら殴られた。暴力反対。
「……俺、こんなにうまいもん食ったの初めてだな」
「ハル?」
「シズクと一緒だったら、きっと何食ってもうまいな」
「俺はなし?」
「もちろん亜希も」
「ん」
注文して先程来たもんじゃを口に運ぶ。
水谷、顔真っ赤。こっちまでつられて真っ赤になりそうだ。まぁ、それも全てハルの天然殺し文句のせいだけどよ。
「ミックスもんじゃ、豚肉ダブルで!」
「俺も」
「おまえらまだ食うのか!?」
とりあえず、久しぶりに食ったもんじゃは、初めてかっていうぐらい美味しく感じた。
9.もんじゃ再び END
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