追試とにわとり
今日は雨だ。憂鬱である。
そしてこんなタイミングで担任から追試のお知らせがあった。担任は何にビビってんのか、ドアの影に隠れながら言った。
「「追試?」」
「この間の中間で赤点取った生徒は追試です。名前書き忘れて全教科0点だった吉田くん弟と、名前も解答も書かずに真っ白な状態で提出して0点だった吉田くん兄は追試です!!」
「採点ラクでよかったでしょう?」
「まぁ……って、そういうわけじゃないです!!」
後ろの方で水谷とハルは追試どうこうと話をしている。1位を取った水谷はもちろん追試などない。羨ましい限りだ。ハルは水谷が追試を受けないのであれば、受けないと言い出した。ハルがうけないなら、俺も受けねえ。担任が困ったようにこっちを見てくるが、無視だ無視。
水谷は俺の答案用紙を見て、本当に真っ白……と呟いた。俺の答案用紙に興味のなくなった水谷は、ハルの答案用紙を手に取った。撫で回すようにハルの答案用紙を見た水谷は、読み進めていくごとに冷や汗まみれになる。名前書き忘れてなかったら、まさかのハルが勝ちだったりして。
そう思って答案を覗き込もうとした、その時。
コケーという鳴き声と共に、ハルのワイシャツが膨らみ、バッサバッサと音をたて始めた。俺は慌ててそれを隠そうとするのだが、それも意味なく、水谷がワイシャツを引っ掴み捲ると同時に、にわとりが出てきてしまった。これは、マズイ。
水谷が固まる。ハルも固まる。俺も固まる。固まるしかない。固まりざるを得ない。その場には静寂が広がった。
水谷が凄い目をして俺達を見てくる。視線が痛い。突き刺さる。
「だ、だってよ、来るとき雨ん中うろうろしてたからっ。なぁ!?」
「お、おうっ。なんだかほっとけなくて……。なぁ!?」
「お、おうっ」
水谷があわあわと慌てて弁解する俺等をみて一言。
「戻してこい」
「「鬼!!」」
「もう一度言う。戻してこい」
「「……はい」」
そう言って水谷は、廊下の方をビシッと指差した。鬼の形相で。鬼がいる……鬼がいるぞー……。
その日から廊下に、「飼ってくれる人、1-B吉田まで。いじめたらコロス」と書かれた段ボールと共に、にわとりが置かれるようになった。なぜにわとり、という声が多かったが拾ってきてしまったものは仕方ない。
つーかこれ、猫だったら悲しい展開になってたりして。
10.追試とにわとり END
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