ショッピングタイム
突然だが、あれから俺とハルは、まあ俺の一方的な感情なんだろうが、気まずいまま過ごしていたりする。行きの道中、気まずい空気のまま、名前を呼ばれようが何しようが無言を貫き、バッティングセンターへ入っていく。夏目が先に到着していたのか、ハルが挨拶しているのを見ながらボケーっとしていると、後ろからドアの開く音が。
「ごっ、ごめん。弟が目覚まし壊しちゃってっ……、」
そこには必死に来たのであろう、息を切らした私服の水谷が居た。いやまあ、うん、皆思うことは一緒なんだろう。思わず感想が口から出てしまっている。オブラートに包んでおけばいいのによ、一応。
「「「ダサい」」」
「……落ち着いてていいと思うぜ……、うん」
「…………」
場所は変わりホームセンター。ハルは何故か犬小屋にかじりついていた。理由が、かっこいいから欲しいという下らないものだけども。その隣には大特価の登りが立っている。なにが大特価じゃ。高いわぼけ。大特価なら俺等の予算内に納めとけコラ。なんて理不尽な怒りをぶつけてみる。夏目とハルは揉めているし、とりあえず放っておくことにした。
「とりあえずほっとこうぜ」
「店入ろう」
「そだなー」
そう言って、俺と水谷、佐々原は2人を置いて店に入る。それぞれ手分けして手際よく買い物することにした。この後鶏小屋の組み立てもあるし、ちゃちゃっと済ませておかねーと帰りが遅くなっちまう。因みに俺はペンキだったり。色の指定も無かったので適当に選んでいる最中、後ろからどたばたと聞こえてきた。迷惑な野郎も居るもんだな。何か一言言ってやろうと振り向いて少し後悔しているけども。俺の横を佐々原が通りすぎていって、その大分後ろをノタノタと走っている水谷。更に後ろにはまあ、いつぞやのバカ共が。水谷ピンチかよ。つーかあいつ等、関わってくんなっつったの覚えてねーのか。まあピンチには変わりねーだろうし、しゃーねーな、とノタノタと走っている水谷が横を過ぎる際に腕を引っ付かんで担いだ。少し乱暴なのは許して欲しい。というかこいつ軽すぎだろ。とりあえず水谷が悲鳴を上げて何かを言っていたいるけども気にしない。スルーの方向で。足が遅いと言ったら一発で黙ってくれたので自覚はあるのだろう。
そこにタイミングがいいのか悪いのか、ひょっこりとハルが登場。そんなハルに佐々原が声を掛けた。
「あ、吉田! 後ろ後ろ、水谷さんと亜希がピンチ!」
「よろ」
軽く声を掛けてハルの脇を走り去る。ハルは状況を飲み込めてないながらも、ピンチという言葉だけを頼りに、チビの襟首を掴んだ。その後ろでが他の奴らが急ブレーキをかける。ハルはチビを持ち上げると、他の奴等に向かって投げた。肩の上であり得ないという目で見ている水谷と、嘘だろという顔をしている佐々原。向こうからは奴等の悲鳴と棚の倒れる音がした。あーあ、可哀想に。つーか棚巻き込んじまったら怒られるんじゃ……? そんなことを疑問に思っていると、ハルはやっと状況を飲み込んだのか、声を上げた。
「あーっ、おまえらっ……」
「今更気付いたのかよ……」
ハルは相手を指差して騒ぐ。周りの他の客からは悲鳴や、何だ何だと声が上がり始めた。これはまずいな。この状況だと完全に俺等が悪者だし。水谷もそう思ったのか、俺の肩の上からハルを引っ張った。いいから逃げよう。そうと水谷が言うと、ハルは1つ頷いた。
「うん、そう。だから悪いけど――」
とりあえずホームセンターから逃げ、バッティングセンターの前まで戻ってきた。佐々原が置いてきてしまった夏目に電話をかけているのを横目で見ながら、そろそろいいかと水谷を肩から降ろし、近くのブロックに上着を敷いて座らせてやる。水谷は少し戸惑っていたが、気にしない。
「さっきも言ったけど、足おっせーな水谷」
「うるさい」
「ちょっと飲み物買ってくる」
ハルが飲み物を買いに、近くの自販機へと向かう。佐々原はその少し後に電話を切ると、荷物持ちに行ってくると言い、ホームセンターへと戻っていった。それから暫くして、ハルは人数分の飲み物を持って、戻ってくる。
「大丈夫か?」
そうハルは声を掛け、水谷にミネラルウォーターを渡した。俺はハルと同じコーラ。こいつ変なところで気を使えるな。
「しかしあんたたちには毎回ぶったまげるわ。片手で人間なげとばすって……。亜希は私担いであのスピードだし」
「あー、まあ、俺、中学一応陸上部だったし」
「見えない……」
「あー? ……まぁ、いい、それ飲めよ」
「それ、俺が買ったやつ」
「うるせぇ、知ってる」
「「「……」」」
それだけの会話を終えれば、その場に広がるのは静寂。水谷は何を話せば良いのか分からないみたいだ。気まずそうにしている。まあ、大体の理由は分かっているけども。するといきなり唐突にハルが言った。
「シズクがおかしい。亜希もおかしい」
「は!?」
「あ?」
「シズクはいつもだったら断る。亜希も俺のこと避けてる。なんかあったのか?」
「べつに……」
「何もない」
「嘘つくなよ。亜希も」
ずい、とハルは水谷に詰め寄る。ちらりと俺を見るのも忘れずに。いやいやいや、お前ら近い、近すぎ。なんだか気に入らなくて無言でハルを引き剥がした。
「う、嘘じゃないよ……」
「ならいいんだけどよ」
ふーん、そこで納得するんだ。水谷の顔を見れば、頬がほんのり赤い。嘘だってことすぐ分かるだろフツー。バカなの?あー、バカか。つーか、水谷もそんな分かりやすく頬染めやがって。そんなにハルが好きなのかよ。オレは、どうしてもそれが納得できないままだ。
なんで、なんで、ハルなんだよ。
16.ショッピングタイム
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