帰り道
あいつらが出ていった後、時間も遅いし、あいつらにでも見つかったら危ねえから、と水谷を送っている最中の話。
俺の一歩先を歩き、階段を登っているハルは綺麗な涙を溢していた。俺はそれを黙って後ろから見ていることしか出来ない。何て声をかければいいのか、分からないのだ。水谷は俺達よりも少し上段から振り返る。ハルが涙を流しているのが視界に入ったのか、目を見開いて驚いていた。
「な……、なにも泣くことないでしょぉ〜!?」
「違う。なんか、嬉しくて」
他人からしてみればちっぽけなことなのかもしれない。友達なんて、と思う奴だって居る。けれど、ハルから見たら、友達というものはとても大きなモノで大切な存在なのだ。ハルは、そういう優しい心を持っている奴なのだ。
水谷がせっかく登った階段を数段降りてくる。ハルに近付き、少し上段から、アイツを優しく包み込んだ。
「……大丈夫だよ。今にハルのまわりは、たくさん人であふれるから」
優しい声色で告げる水谷は顔を上げ、俺の方を見た。そのままの声色で、もちろん亜希も、と小さく付け足された言葉と、彼女の優しい表情にどきり、と心臓辺りが跳ねた。目頭が熱い。なにか込み上げてきたきがして、それを誤魔化す為に下段からハルごと水谷を抱き締めた。水谷もハルもすこし苦しそうにしているが、今だけ許してほしい。
込み上げてきていた何かは、そのまま頬を伝って階段の上に落ちていった。
「俺、」
少しして涙が止まった頃、ハルが言葉を発した。我に返って気まずくなった俺は、そっと離れる。ハルがちらり、とこちらを見た。やめろ見るな恥ずかしい。
「シズクがいるんなら、学校行ってみてもいい。なぁ亜希」
「あー、お、お前が行く気なら、俺も」
「おう」
「ハハ、そりゃよかった」
もごもごと話したのに、ハルが聞き取って頷く。水谷が再び優しく笑う。それを見て、やっぱり少し心臓の辺りが跳ねた。なんだこれ、病気、なのか。なにか重大な病気だったらどうしよう。そう思っている間に、ハルが水谷に詰め寄っていった。ハルの突然の行動に、水谷は少し引いてしまっている。何しているんだ、ハルは。
「なんか、ドキドキする……」
「は?」
「俺、シズクがスキかも……」
「ハ、ハル?」
なんからんらんとしているように見えますけど。ハル、輝いて見えますけど。ドキドキ、って、お前も病気なの?大丈夫なの?
戸惑った様子の水谷がハルに問い掛ける。
「え、そ、それは友達的なイミで?」
「イエ、性的な意味で」
「ハルやめろ、やめてくれ」
水谷がびっくりして固まった。俺も若干びびっている。ほぼ初対面同然……って、ハルからしたらもう友達だった、けどよ。
うららかな春の日。
俺は生まれてはじめて弟の告白シーンを見てしまったのであった。
ねぇ、俺、なんか邪魔じゃねぇ?大丈夫?すんげー気まずいんですけど……。
3.帰り道 END
【
*前】【
次#】