学校






「よぉ水谷」

「シズクっっ、助けてくれっっ。追いはぎだ!! 学校で追いはぎがでた!!」

「いきなり金出せって言われたんだけど。つーかハル、追い剥ぎ、じゃなくてカツアゲな」



俺とハルは顔がぼこぼこになった男を持ち上げて言った。周りには再起不能な奴等が転がっている。可哀想だけど先に吹っ掛けてきたのはこいつらだし、正当防衛正当防衛。え? 過剰防衛? んなわけあるか、気のせいだろ。
水谷はこの有り様を見て凄い顔をし、そのまま走って逃げた。ハルが当たり前のように焦って追い掛けて行ったので、俺も後から着いていった。
……去り際何かを蹴った気がしたが、気のせいだということにしておこう。俺はなにも蹴っていない。



























「まさか日中堂々と追いはぎなんて……高校コワ!!」

「怖いなぁ」

「……いちおう言っとくけど、その認識は間違ってると思うよ」

「冷静だな」



ハルはどこからか持ってきていたシーツにくるまって、ガクブルと震えていた。多分保健室だと思うが。その隣にはパンを食べながら参考書を開く水谷。ほんと、こいつ勉強好きだな。

俺等が高校に来て1ヶ月。
ハルは誤った奇行、言動を繰り返していた。



例えばだが……。



短い休憩時間。次の授業が体育で、俺が授業前にトイレ、と思って済まし、ジャージに着替えようと教室に戻ってきたときの話。
あまりにも教室が賑やかだったもんで、何があったのかと扉を開けたら、顔を真っ赤にした全裸姿のハルが居た。
もうハルが全てをさらけ出したせいでクラス中パニックである。特に女。
俺は溜め息を吐いてブレザーを脱ぎ、人混みを掻き分けてハルの喪とへとずかずか進む。クラス中俺に注目じゃねぇか畜生。嫌だわこんな注目のされ方。
俺はハルのさらけ出されたそれを隠すようにブレザーを彼の腰に巻き付けた。尻が隠れないがまあ後ろ向かせなきゃどうにかなる。



「ハル、教室でそんなもん出すな」

「え、だってみっちゃんが、」

「みっちゃんが?」

「高校の体育は男女ハダカで生着替えだぜって」

「捉え方が違うというかなんていうか……。ハル、みっちゃんの言ったこと何でもかんでも鵜呑みにするな」

「え、何で?」

「何でもいいから。ほら、服着ろ」



そう言って尻を叩くと、ハルが頬染めぎゃーっといいながら服を着替えだした。説得中終始不思議そうな顔をしていたので意味は分かってないっぽい。
誰かが助かった……、と言ったのとほぼ同時に、吉田兄って意外と制服きっちり着てるよな、と聞こえてきた。
俺は制服きっちり着るタイプなんだよ。ボタンは第一まで閉めて、ネクタイはぴっしりと上まで、ズボンは腰より上でワイシャツはちゃんと入れて……、ってそうじゃねぇだろ。論点ずれただろ。





その他にも。昼の売店で。





「ほ、本当に行くのかよ」

「イエス!! 昼休みは戦いなのよ。さあ、行け!! あたし激辛キムチパン」

「俺焼きそばパンとメロンパンで」

「た、戦い……!」



水谷がうきうきしだしたハルの背中をどん、と押す。ていうか、あの説明じゃハルは勘違いしている気が、だな……。うきうきしてた理由もわかんねえし危ねえんじゃ……。



「水谷、少しヤバいんじゃねえのか。ハルの奴、解釈の仕方間違ってるかもしれね……って、あ」

「主、主将――っっ!!」

「てめえ、主将になにしてんだ――」

「遅かったか……って逃げんな水谷!」



ハルがやらかしたのを見て、その原因となった水谷はぴゅっと逃げていってしまう。逃げ足の早い奴め。足は遅いくせに襟首掴む暇がなかった。しょうがない、ハルに加担するか、と俺は輪の中に入っていった。
因みにその日の昼休みは乱闘で丸々潰れた。水谷は他人事で飯食ってた。腹減った……。

そんなこんなで今やハルは、いろんな意味で危険な男に任命されているのだった。俺その兄……。ん?俺いろんな意味で危険な男の兄っていう認識なの?








4.学校











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