双子だから






「ただいま」

「おかえり。……というか少し早いんじゃないのか、おまえといい、ハルといい」



ポケットに手を突っ込んでずかずかと入っていく。家ではないが、まあただいまはただいまだ。
みっちゃんは煙草を吸いながらこっちへと視線を向けた。
ソファーに寝そべっているハルの傍の灰皿を蹴飛ばす。
カランカラン、と音を立てて、ステンレス製の灰皿は倒れた。吸殻は入っていない。ハルも自主早退かよ。



「おい亜希。それさっきハルが倒して起こしたばっかりなんだぞ」

「そっか。悪ぃ、後で起こす」

「……なに荒れてんだよ」

「……あー、喧嘩した」

「は?」



聞き返してくるみっちゃんに視線を向けながら、ハルの寝そべっているソファーの空いている所に座る。ハルが少し邪魔そうにしていたが、許してほしい。座って、落ち着くようにと息を吐いた。



「ハルが居なくなれ、って言われたから、そいつにてめぇが居なくなれって言って、ガラス叩き割った」



説明したからには、証拠も必要なのだろうか。ゆっくりとポケットから手を出すと、2人はびっくりしていた。ぐっぱーと動かしてみる。一応、動きはする。ほっぽっといたからか、血が固まりかけて、真っ赤な拳だ。
冷静になってきた、と思ったら痛みだしてきた。少し、じくじくする。



「お前……そこまですることないだろ。つーか、本当ブラコンだな」

「うるせぇ、みっちゃん」



小さい頃から、亜希、亜希、と後ろをくっついてくるハルを見ていたら、兄貴なんだから弟を守らなきゃ的なのになっちまったんだよ。俺はあいつとは違うんだ。兄貴が弟を守るのは当然のこと、だと思っている。



「手当てするからこっち来な」

「サンキュ」



みっちゃんに手招きされてそこへと向かうと、後ろからヒョコヒョコとハルが付いてきた。ひよこかお前は。俺がみっちゃんの正面に座って手を差し出すと、ハルが肩からひょっこりと顔を出し、覗きこんできた。すこびびってびくりと震えてしまった。笑うなみっちゃん。



「どうした?」

「痛いか?」

「んー……まぁ、大丈夫」



ハルが少し悲しそうな顔をする。見たくないと思ってやったはずなのに。片割れをこんな顔にしてんのが俺だと思うと、少し胸がズキリとした。俺まで悲しくなってくる。



「ガラスの破片、刺さったままじゃねーか」

「あー……だからなんかチクチクするワケだ」



毛抜きでみっちゃんが器用に破片を抜いていく。消毒を傷口にかけられた時、少し染みたので、思わず眉間にシワを寄せると、ハルは泣きそうな顔になった。なんだかなあ、もう。そんなに気にする必要ねえのに。俺の自業自得なんだからよ。
みっちゃんに包帯を巻いてもらい(少し大袈裟だと言ったら無言の圧力で黙らされた)、立ち上がると、ハルの頭に包帯を巻いていない方の手を乗せて髪をかき混ぜた。



「うわっ」

「俺の自業自得なんだし、そんな顔すんな。今度もんじゃ食べに行こう、な?」

「…………」



悲しみ半分こ、双子だからこそ、分かり合えるっていうんなら、俺はハルには笑っていてほしいよ。
ハルは小さくこくりと頷くと、優しく俺の手を包み込み、頬を擦り寄せた。







7.双子だから END








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