駅での別れと出会い
止まることなく歩みを進めるとそこは、紅色の大きな蒸気機関車が停まったプラットホームだった。後ろには9と3/4番線と書かれた鉄のアーチがあった。
周りは親子で別れを惜しむんでいるのもいれば友人同士でおしゃべりに夢中になってるのもいた。
車両に乗るために、小さな体で頑張って荷物を引き上げようとしたが、段差と荷物の重さでなかなか上がれずにいた。
「うっ、全然持ち上がらない……」
ラヴィニアは、諦めて誰かに助けを求めようとした。だが、周りの人は二人以上で行動してる人ばかり。知らない人間が1人割り込めるような状況ではなかった。
「どうしよう……」
そう呟いたとき、ラヴィニアの後ろでガタッと物が動く音がした。どうしたのだと思い、彼女は振り返った。すると、あれほど頑張って動かなかった荷物が列車の上へと乗っかっていたのである。
「な、なんで……荷物が?」
「1人で持ち上げるのは無理だろう?お嬢さん」
荷物の後ろから背の高い赤毛の青年が現れた。
「……ありが……とう、ござ……います。助か……りました」
あまりのことに、驚きを隠せなかったラヴィニアはカタコト言葉でお礼を言った。彼はクスクスと笑って気にしないでと告げる。
「そんなに緊張しないで。1年生でしょう?そんな重たいものを一人で持ち上げようと無茶するのだから」
ずばり、言い当てられた。赤毛の青年はよく下級生のことを知っているのだろうかと、ラヴィニアは思った。
「えと、はい。今年から入学します」
「ふふ、僕の一番下の妹が入学するときもこんな感じなのかな。僕はウィリアム・ウィーズリー。グリフィンドール寮の七年生だ」
ウィリアム・ウィーズリーと名乗った彼は、右手をさしのべてラヴィニアと握手した。ラヴィニアは、初めて年上の男性と握手したので、顔を赤らめて、うつ向きがちになった。
「……ラヴィニア・アルフォードです。宜しく……」
「ラヴィニアだね、僕のことはビルと呼んでくれて構わないよ。僕の6つ年下の弟たちが今年入学でね、もし会ったら宜しく頼むよ」
彼は一言で表すと「ハンサム」だった。孤児院で幼い頃から共に育った子供たちしか知らないラヴィニアは、笑顔で話す年の離れた男性であるビルが眩しくてしかたがなかった。ラヴィニアの顔は蒸発しそうなほどまで真っ赤に染まった。恥ずかしさからか、早くこの状況から抜け出したいと思った彼女は、無理矢理にでも言い訳を作って立ち去ろうとした。
「……荷物を上げてくれてありがとうございました。コンパートメント探すのでそろそろ……」
ビルはそんな彼女の様子を気にせず、ああ、そうだったねと、彼女の荷物が乗ったカートを車両の後ろの方へ向かって押し歩き始めた。
「コンパートメントは後ろの方が空いてるだろうから、そこまで案内するよ。ああ、僕はもう取ってあるから気にしないで」
ラヴィニアの必死な言葉は、彼に届くことはなかった。だが、これでコンパートメントがとれるなら。そう気を取り直して彼女は背の高い彼を、小さな体で追いかけた。
ほどなくして、ラヴィニアは空いてるコンパートメントを確保した。ビルとは学校で会おうと言って別れた。
「……学校に着く前に緊張で死にそう」
誰も居ないコンパートメントでため息をつき、彼女はミミズクのレナードに愚痴を言った。レナードは首を傾げるかのような動作をするのみであった。
11時になり、ホグワーツ行きの紅色の蒸気機関車は、笛をならして発車することを知らせ、ロンドンを経った。ホームからは、沢山の親、兄弟たちが見送って手を振っていた。ラヴィニアは、そんな窓の外の様子を悲しげに見つめていた。
「レナード。私の両親が、魔法使いだったらいいよね」
ラヴィニアは、か細い声で呟きながら、
彼女の小さな手で、ふんわりとした触り心地のレナードの背を優しく撫でていた。