駅での別れと出会い
8月もあっという間に過ぎ去り、とうとうホグワーツへ通い始める9月1日の前日となった。
ラヴィニアは、この8月の間はダイアゴン横丁で買った魔法の教科書をひたすら何度も読んでいた。見慣れない魔法というのは、とても読んでいて興味深いものだと思っていた。
マクゴナガル先生が買ってくれたアフリカワシミミズクには、レナードと名付けた。とても人懐こいので、孤児院でいじめられることもなく、寧ろあまり見慣れないミミズクを、「見たい触りたい」という子供たちに囲まれていた。
ホグワーツは寮で暮らす寄宿系学校のために、ラヴィニアは沢山の荷物を持っていかなければならなかった。とはいえ、孤児院では他の子と共同で使うものがほとんど。自分1人のものというのは、普通の家庭の子に比べれば少ないため、必然的に持っていくものは少なくなる。ラヴィニアは、ダイアゴン横丁で買った教科書、魔法道具、杖、制服、休みに着る普段着、他日用品を丁寧にカバンへとしまっていった。
そこへ、アナベル院長がやって来た。
「ラヴィニア、準備は滞りなく進んでますか?」
「はい、院長。ほとんど物がないので大方終わってます。残りはレナードに鳥籠に入ってもらうぐらいです」
そう言って、ラヴィニアはレナードを呼び寄せる。院長はそのようすを微笑んで見守っていた。
「そう、なら安心ね。……ねえラヴィニア 」
「何でしょう?」
院長は突然声色を低く変えて話しかけた。
「ホグワーツでね。……その、あなたの過去、御家族についてわかる人が居るかどうか、調べてきたらどうかしらと思って……」
「私の過去と家族を?」
ラヴィニアは者をカバンに積める作業をやめて、院長の方へと体を向けた。
「ラヴィニアは魔法使いだとわかった。もし家族が同じ魔法使いなら、きっとどこかであなたのことを知ってる人がいるかもしれない。そう思ったのよ」
院長は静かに、でもはっきりとした口調で続ける。
「あなたの知らない幼い頃の記憶。それに魔法が関係しているのだとしたなら、記憶を取り戻す方々もわかるのではないのかしら?」
「……確かに。私の過去に魔法が関係しているなら、何かの拍子に戻るかも……!」
ラヴィニアは、自分の幼い頃の記憶のことを思い出したくて仕方がなかったのである。孤児院の子たちは、何かしら親との繋がりを持っていた。ただ1人、ラヴィニアは親との記憶、形見になるもの等がなかった。魔法界でもし繋がりのある人が見つかったら?知らない過去を知っている人が居たら?私は孤独ではなくなる。
「院長……、ありがとうございます!私、きっと、きっと、記憶を取り戻す方法を見つけ出してみせます!」
ラヴィニアは、にこやかに笑ってみせた。院長も、心配そうな顔付きだったが、それを聞いて安心したようにみえた。
「ラヴィニア、これで私も安心して送り出せるわ。ホグワーツでの勉強、頑張ってね。友人も沢山つくって、楽しく過ごしてね。あと、危ないこと、やってはいけないことは、してはいけませんよ」
院長は、いつもの調子に戻ってくどくどと注意を言い出した。ラヴィニアは暫くそれを聞くことができないのだと思い、少し寂しく感じた。
9月1日
いよいよ、出発の時がやってきた。ラヴィニアは普段では考えられないような膨大な荷物をカートにまとめ、レナードの鳥籠を持っている。彼女は玄関から出ると、門の前に止めてある院長の白い車へと向かった。院長が、車で孤児院からキングス・クロス駅まで送ってくれるというので、ありがたくその親切を受けた。孤児院で御世話してくれた人々、そして子供たちが門の中で見送ってくれた。
Γ行ってらっしゃいラヴィニア!気を付けてね!」
皆が口を揃えて挨拶をした。
Γ行ってきます!」
ラヴィニアは、手を大きく振りながら院長の運転する車に乗り込んだ。
数十分後、キングス・クロス駅の駐車場へ着いた。院長はここまでしか見送れない。車を下りて、二人はハグをした。院長は、ラヴィニアの頬にキスもした。
Γそれじゃあ、ここでお別れよ、ラヴィニア。休みに帰ってこれたら、帰ってきて学校でのことを是非聞かせてね」
Γ勿論です、アナベル院長。手紙も書くので読んでくださいね」
Γええ、楽しみにしてるわ。さあ、後20分で11時になるわよ!行ってらっしゃい、楽しんでね!」
Γはい!院長、冬休みに会いましょう!」
会話を終えると院長は車に乗り、クラクションを鳴らして走り去っていった。ラヴィニアは、ここから1人でホームまで向かった。切符が入った封筒を手に持ち9番線の所へと来たが、どこにも9と3/4番線などなかった。
当たりをよく観察しながら見回すと、同じような荷物を詰んだ人をラヴィニアは1人発見した。ラヴィニアは急いでその人を追いかけた。すると、ある一ヵ所の柵へと突っ込んでいったのである。
ラヴィニアは、他にも同じ人が居ないかともう一度見回した。すると、また二人ほどその中へ走っていくのを見た。
間違いない、ここがホグワーツ行きのホームに繋がっているのだとラヴィニアは確信した。そうと決まれば、そこへと彼女は早歩きでその柵へと向かっていった。カートがぶつかる、と思ったらそのままスーッとどこかへ繋がった道があることがわかった。