列車での会話
9月1日
マルティナは、今年もアナベル院長にキングス・クロス駅まで送ってもらった。
「今年から、凄い子が入学するんでしょう?あまり気を使わせないようにね、そういう子は大概苦労してるんだから」
「院長、心配しないで。そもそも寮が違うに決まってるわ」
院長は、生き残った男の子のことについて言ってるのだろうことはすぐわかる。だが、ラヴィニアは、その彼をあまり気にとめていなかった。その名前を言ってはいけないあの人を、消滅させたとはいうが、そのあの人がどんなものか知らなかったというのも大きい。
「それじゃあ、行ってらっしゃいね」
「はい、院長」
院長と別れて、キングス・クロス駅に入り、9と3/4線に向かった。相変わらずこの駅は人でごった返していた。
9と3/4線に着き、ラヴィニアはマルティナの姿を探していた。すると後ろから、駆け足の音が聞こえてきた。
「ラヴィニア!」
マルティナであった。彼女は、先に着いており、コンパートメントを確保していたらしく、荷物を持っていなかった。
「きゃっ!マルティナったら、抱き付くのあぶないでしょう?」
ラヴィニアは、マルティナに少し怒った感じで注意したが、彼女は何ともおもってないようだった。
「いいのいいの。ふふ、コンパートメント取っておいたわ。さあ、ラヴィニアも荷物置きにいきましょう!」
そうして、ラヴィニアもマルティナが確保したコンパートメントに荷物を置きに行った。
11時になり、列車は発車した。二人は、コンパートメントでおしゃべりしていた。列車販売がやって来たときに、二人はカエルチョコと百味ビーンズを買っていた。
「あ!ねえ、さっきフレッドとジョージに会ったんだけどさ」
何かを思い出したかのようにマルティナが話題を転換した。
「あの二人、ハリー・ポッターに会ったんだって!」
「ほんとに?二人とも運が良いんだね」
マルティナはラヴィニアが思っていたより驚かないことに、つまんないというかのような顔をした。
「呆れた、あなた。あのハリー・ポッターよ!?見たいと思わないの?」
「だって、学校の組分けでどうせわかるでしょう?それに、あまり興味湧かないというか……よく彼のことわからないし、凄いって実感がないの」
ラヴィニアは、苦笑いして答えた。マルティナはむくれた顔つきになったが仕方ないと思うことにして、彼のことを力説した。
「ラヴィニアは、マグル生まれだからね。彼の凄さが分からないのは仕方ないけどさ。魔法界ではものすっっごい有名なんだから!何せ、例のあの人に敵うものは居ないといわれた時代。彼に死の呪文を唱えられて生き残る者は誰一人いなかった。なのに!ハリー・ポッターは生き残った上に、例のあの人は消え去った。だから、彼の名前を知らない人は居ないわ!知らないのは言葉のわからない赤子ぐらいよ」
「……ほんとに、凄い人ね」
「まあね。あ、そうそう。彼にはお姉さんが居たんですって。私たちと同じ年で同じ学年なのよ!ああ、会ってみたかったわ……」
「お姉さんが居た?今はどうしてるの?ポッターなんて名字の人ホグワーツには居なかったはず」
彼女のマシンガントークに、入る隙がなかったが、ラヴィニアはその姉のことが気になったのでマルティナに聞いてみた。
「そう!そのお姉さんの名はマーガレット・ポッターっていってね。彼女はその日以来行方不明になってるの。例のあの人に、殺されたんじゃないかって言われたけど、それなら死体があるはずなの。当時はよく日刊予言者新聞で、行方不明の彼女を捜索中って感じの記事がいつも載ってたらしいわ。でも、目撃情報が集まらないし、死体となって見つかってもいない。ここ数年の一番の謎なのよ」
マルティナは何でなのかしらね?と、聞いてきたが、ラヴィニアはその頃の記憶が無いため、さあ?と答えるしかなかった。ラヴィニアは、百味ビーンズを口に含みながら、ハリー・ポッターはほんとに謎が多い人物であると、しみじみ思った。