夢の中とお見舞い
私は痛みに耐えながら立っていたが、どうやら限界らしい。最後に聞こえたのはマクゴナガル先生の声。最後に見たのは漆黒の闇。いや、心配そうに見つめるスネイプ教授の顔だった。ほんの一瞬、見えただけなので、確かではない。
私は夢を見た。前とは違った夢だ。
私が居たのは知らない場所だった。空気がよどんでいるのか、黒と灰色の暗雲に包まれたような気味の悪い場所だった。
あの夢の中の、漆黒の髪の少年が前にたっていた。ホグワーツのスリザリン寮のローブをまとっていた。
「あなたは誰なの?」
私の声が知らない空間に響いた。声に出してしまったようだ。
相手は笑っているだけだった。いや、笑っているのは口だけ。目は鋭くこちらを見つめていた。
「君は知っているよ、僕のことを」
少年が、優しげに、だけどはっきりとした口調で言った。
「私が知っている?あなたのことを夢の中で何度も、何度も見たわ。けれど、私はあなたのことは知らない!名前も、年齢も、どこに住んでいるのかなど、全然知りはしない!」
少年がぶれた。と思うと、次の瞬間には、私の前に移動してた。彼が思っていたより背が高いことがそれでわかった。私より頭ひとつ分は遥かにある。
彼をこわいと、はじめて思った。
少年はニンマリと笑ってこちらをみていた。反応を楽しむかのように。
「君は忘れているだけ。いや、忘れさせられているんだ。さあ、目を覚ませ……。君の中に封じ込められた過去の記憶を……」
彼が私の頬に触れようとした瞬間、火花のようなものが飛び散った。
「……っ!チッ!やはり何かを仕掛けていたか。…………これでは暫く様子見か。そろそろ良い頃合いだと思っていたのに」
少年が何かぶつぶつと言っていた。
私はそれよりも、彼の言っていた過去の記憶のことが気になった。図書館に足しげく通っていたが、未だに謎は解けないのだ。
「まあいいさ、時期が来れば思い出させてみせる。待っててよね、僕の…………」
それ以上は聞き取ることができなかった。
目を覚ましたときには、夜中なのだろう、明かりがついていない部屋だった。私のいた場所は医務室だった。きっと、誰かが運んでくれたのだろう。私はそう思い再び眠りに着いた。今度は夢を見ないことを願いながら。