夢の中とお見舞い
次の日、ラヴィニアは、自分の布団がいつもと違うことに違和感を感じて起きた。そして、怪我をして医務室に運ばれたのだと思い出した。
布団の音がしたことに気づいたマダム・ポンフリーがせかせかとやってきた。
「目が覚めましたか?Ms.アルフォード。トロールに襲われて怪我をしたと聞いたときは、マクゴナガル先生以上に肝を冷やしましたよ」
「うっ、……ごめんなさい。あ、まだ医務室に居ないといけませんよね?」
「当然です!今日一日は、医務室で様子を見ますからね。さあ、暖かい朝ごはんをたべて、また休んでくださいね。早ければ、夕食時には普段通りに過ごせますから。食べ終わったら、また声をかけてくださいね」
そう言うと、マダム・ポンフリーは食事を運んできた。 ラヴィニアは、残さずそれを食べ終えると、マダム・ポンフリーを呼んだ。彼女は、ジョッキに入ったおどろおどろしい色の薬を飲むように伝えた。 ラヴィニアは、いやいやながらもそれを飲み干した。薬はとても酷い、この世の物とは思えない不味さだった。
朝ごはんの時間が終わると、見知った顔が医務室へと現れた。マルティナ、アンジェリーナ、アリシア。それからウィーズリーの双子となんと、エドマンド・アヴァロンもいた。ラヴィニアは、どうして彼が居るのか不思議でならなかった。それぞれ、 ラヴィニアのベッドの回りを囲んだ。
「ラヴィニア!無事だったのね!?今朝、マクゴナガル先生があなたのことを伝えてきたときは、驚きで死ぬかと思ったのよ?」
マルティナが一番に話しかけてきた。
「ほんとだよ。『ラヴィニアが寮に戻ってこない!』って、マルティナはずっと騒いでたんだから」
「大人しい顔して、やることはとんでもないことだわ。ふふっ、ラヴィニアもグリフィンドール生ってことね」
アリシアとアンジェリーナが口を揃えて言うことには、マルティナが騒いでばかりだったということだ。
「ごめんね、心配かけて。でも、もうあまり痛みはないし、足の方も暫く安静にすれば問題ないって言われたからさ」
「まあ!足もなの?マクゴナガル先生が、あなたの腕が血まみれだったって言ってたから……」
ラヴィニアは、昨日のことを簡単に説明すると、男性陣までもがびっくりしていた。フレッドとジョージは面白おかしくしたかったらしいが、 ラヴィニアの話を聞いてあまり笑えないことだと、わかったようだ。
すると、後ろで口を閉ざしていたエドマンドが、前の方へとフレッドとジョージに押し出された。
「ああ、そうだ。エドマンドが何だか知らないけど、ラヴィニアに用があるから一緒に行くって言ってたんだ。ほら、エドマンド」
彼の前髪が長いので、ラヴィニアは彼の表情が読み取れなかった。
「……用って何?Mr.アヴァロン」
ラヴィニアはおそるおそるたずねた。
「…………昨日、お前がグリフィンドールの列から外れていくのが見えたんだ。それで……俺は追いかけたんだけど、見失って……」
エドマンドは、うつむきがちになって、かすれた声色で話した。
「もし、俺が見失わないで、引き留めていたらこんな……。ラヴィニアは大怪我しなくて済んだんじゃないか!って、そう思ったら……。謝らないと、いてもたってもいられなかったんだ」
ラヴィニアは、エドマンドがこのようなことをする人だと思っていなかった。彼は大概一人で教科書や本を読んでばかりなので、勉強ばかりで他に目をくれないような人だと思っていた。たまに、フレッド、ジョージやリーと話すところを見かけるが、それ以外は一匹狼のようなところがあった。
「……そういうことだったの。エドマンドは親切なのね。わざわざ追いかけてくれるなんて……」
エドマンドは呆気にとられた。親切なんて言葉を、今まで言われたことがなかったのだ。喉へと込み上げてくる嬉しさを言葉にしたい、と思ったがそれは予期せぬもので止められた。
彼の前に脇からすっと腕がのびてきた(フレッドとジョージのものだった)と思ったら、彼の前髪をつかみ、真ん中でわけて彼の両耳へとひっかけた。
そこにいた誰もが思った。このひと/こいつ、なんで顔を出さないのだろう?と。
彼の瞳はきれいな蒼い海のような色をしていた。目鼻立ちは整っており、普通に良い顔だ。いや、誰もが良い男だと思うに違いない。当初は、病人のように白い肌だと思っていたが、マルティナより白いと思う程度になっていた。後数年たてば、誰もが憧れるような男になるだろう。
「エドマンド、どうして前髪伸ばしっぱなしなんだ」
「こんな良い面構えしてるのに」
フレッド、ジョージが口々に言った。エドマンドは顔を赤く染めた。白い肌のおかげでさらに赤く見えた。
「……お、……たいで」
「……お?エド、何て言った?」
「………お、女みたいで嫌なんだよ!」
その場の誰もが目を点にした。エドマンドは、顔を真っ赤にしてその場に立ち尽くしていた。双子が笑い出すのは時間の問題だった。
「ぶっ、ははははははは!」
「ふは、はは!エド、冗談キツ……うげ!」
エドマンドは怒りで更に顔を真っ赤にしてた。そして、フレッドかジョージかわからないが、片割れを思いきりグーで殴った。
「理由聞かれるの嫌だから、人と接触しないようにしてたんだよ!それなのに……。どうせ笑われるに決まってるから、ずっと言わないでいたんだよ」
「なら、なぜ今ここで言ったの?」
マルティナが質問した。
「…………。ここでなら、笑われないと思ったんだよ。言っても良いって思えた」
「あら、女顔なんて思って悲観しなくていいのよ。それぐらい、後数年立てば男らしい顔つきになるのだから、楽しんでおきなさいな」
「そんなポジティブに思えなかったんだ。でも、今ならそうできるかな……」
マルティナの言葉に、エドマンドは少し笑いながら答えた。
「エドマンド、お前俺たちのときと態度だいぶ違うぜ」
「はは、それは済まなかった。フレッド」
「今何て言った?フレッドだって、お前よくわかったな」
どこが違うんだかと、女子組はそれぞれ顔を見合わせて、訳がわからないという顔をした。
「今朝、少し寝癖が着いてたんだよ。フレッドの方にね」
「なんだ、そういうことか!」
その後、暫くおしゃべりが続いたが、マダム・ポンフリーによって「いい加減にしなさい!」と怒られたことにより、お開きになった。
この日、エドマンドという新しい友人が、 ラヴィニアたちに増えた。
お昼休みになると、今度は一年生の三人がラヴィニアのもとへ訪れた。
「あら、いらっしゃい。三人とも元気?」
もちろん、ハリー、ロン、ハーマイオニーだ。
「ラヴィニア、昨日はごめんなさい!あなたが怪我をしてたというのに、私、寄っ掛かってばかりで……。まだ痛む?」
ハーマイオニーが超特急で話しかけてきた。
「一晩ぐっすり寝たから、もう大丈夫よ。あなたこそ、大丈夫かしら?」
「私はもう平気。ラヴィニア、ほんとにごめんなさい」
ハーマイオニーはへこんでばかりだった。
「もう気にしないの。私はこの通り無事だったんだし。ハリーとロンは平気なの?」
ラヴィニアは、ハリーとロンに声かけた。
「僕は杖があれだけど、からだの方はピンピンしてるよ」
「一番無害だったから……、ラヴィニアも早くよくなるといいね」
ラヴィニアは、ハリーの杖のことを思い出した。急いで記憶から削除しようとした。
その後、授業が差し迫っているとのことで、一年生を送り出した。
暫くすると、予想外の人物が見舞いにやってきた。
スネイプ教授だった。
「スネイプ教授!どうしてこちらに……」
「昨日倒れたMs.アルフォードを運んだのは我輩だ。だいぶ回復したと、グリフィンドールの生徒が話していたのでね。様子を見に来ただけだ」
ラヴィニアは、運んでいたのがスネイプ教授だとわかり、安心した。そして、礼を告げた。
「やはり、教授だったんですね。医務室へと運んでくださり、ありがとうございます」
「いや、構わん。具合の方はどうだね」
教授は、目をそらしながらたずねた。
「だいぶ、良くなってます。今日の夜か明日には普通の生活に戻れるようです」
「そうか。……無事で良かった」
ラヴィニアには、最後の言葉は聞こえていなかった。
その後暫く、教授と会話を続けた。ラヴィニアは、陰険根暗と呼ばれることの多いこの人は、そんな人間でないと、このとき確信することができた。
30分後、授業があるとのことで、スネイプ教授はここを立ち去った。
夕方、マダム・ポンフリーの見立てで、今夜も医務室へと留まることになった。だが、夕食は大広間でとって良いと言われたので ラヴィニアは、大広間で夕食をいただいた。一日ぶりの大広間での食事は、特に編鉄もないものだったが、ラヴィニアにとっては、とても素晴らしく思えたのだった。