空白の期間
『…………あら、 マーガレット。もう起きたの?ふふ、あなたは早起きね。ジェームズったらまだ寝てるのに…………』
『…………リリー!見てよ、マーガレットが魔法を使ったぞ!さすが僕の娘だ!…………』
『シリウスやめろ! マーガレットが嫌がってるじゃないか、百味ビーンズは駄目だ!』
『はあ?百味ビーンズだってうまいのは有るだろうが。なあ、 マーガレット?』
『 マーガレット、わかる?あなたの弟が生まれるのよ!名前は何にしましょうかね?』
『リリー、名前を誰に決めてもらおうか? マーガレットは君に決めてもらっただろう?』
『そうね、あなたでもいいのよ。それとも、お友だちにつけてもらう?』
これは、私の…………。
ああ、そうだ……!
私の名は…… マーガレット。
マーガレット・ポッター、それが私の本当の……!
『ふははははは!愚かな……死ね!』
『リリー、ハリーとマーガレットを連れて逃げるんだ!』
『マーガレットは逃げて、ここから逃げなさい!さあ、早く!走ってこの家から離れるのです!必ず誰かがあなたを見つけるから、ここから離れなさい!あの人が見つけられない場所に!!』
これは……お母さん?
そうだ、私は家から出て走ったんだ……。
そしたら……。
『本当に面倒なお人だ。亡くなった後に私に頼むとは……。マーガレット・ポッターだな?私の後についてこい。お前を案内するようご両親に頼まれた』
この人は……夢の中で会った人だ。
孤児院に連れていってくれたのはこの人?
ぐらぐらする中、私はまた意識をとばすのだった。
次に目覚めるときは、現実だということを願いながら。
ラヴィニアが倒れたその日。
マルティナは、ロンからの話を聞いた後、マダム・ポンフリーにラヴィニアが倒れる前に何があったかを話した。そして、ラヴィニアは幼い頃の記憶が一切無いということ、今まで孤児院で育ってきたということも明かした。
「なんですって!?そのようなことが……よくまあ、そんなことを今まで隠してこれましたね。孤児院で育ったというのは聞いていましたけど……。ああ、校長先生に話さなくては……!あなたたちはここにいてください。すぐに戻ります」
マダム・ポンフリーはそれを聞くと大層驚いた顔をしたが、すぐにダンブルドアへと話をするために校長室へと急いだ。
「あれを話してしまって良かったのか?マルティナ」
マルティナと行動していた、エドマンドがたずねた。ラヴィニアは今まで記憶がないことを、マルティナにしか明かしていなかったのだ。
「……これ以外、彼女を救う方法が思い付かないの!あの子は、寝起きに青白い顔になっていることがたまにあった。決まって前の日の夜中に彼女はうなされていた。私は、彼女のベッドの隣だから気づいたの。私は医務室に行きましょうと言うけど、彼女は決まって気にしないでと言うの。私が無理やりにでも連れていけば、こんなことにはならなかったかもしれない……」
マルティナは自分を責めていた。そして、 ラヴィニアのベッドのわきで涙を流した。
エドマンドは、ハロウィーンのときを思い出した。だが、あのときとは状況が大分違う。怪我ではない、これは彼女自身しかわからない問題が原因だ。
暫くすると、医務室へと走ってくる足音が聞こえた。マダム・ポンフリーが校長を連れてきたのだろう。と思いきや、マクガナガルにスネイプも居た。なぜ彼まで居るのか?二人は疑問に思った。
「Ms.ヴィルヘルムス、Mr.アヴァロン。よくぞ知らせてくれた。彼女のことが心配じゃろうが、後のことはわしらにまかせておくれ。大丈夫じゃ、彼女は必ず戻ってくる」
ダンブルドアがそう言って、マルティナとエドマンドは医務室から退出させられた。
マルティナは心配そうに医務室の戸を見つめていたが、やがて寮へと戻るため歩きだした。エドマンドはその悲しげな背を心配そうに見ながら、 マルティナの後について行った。
ダンブルドアは、マルティナとエドマンドが去っていったのを確認すると、マクゴナガルとスネイプと共に、ラヴィニアの元へと近づいた。彼女は横たわったまま微動だにしていなかった。
「セブルスよ、前にも言っておったが、この子はリリーにそっくりだと思うか?」
「初めて見たときから、後ろ姿は似ていると思っていました。見る都度、昔の面影が出て来ました。なにせ、瞳の色が赤褐色ですからな。ですが、彼女の子は死んだといわれていたので、他人のそら似に過ぎぬとばかり……。」
スネイプは、苦々しげに告げた。リリーの子であって欲しいと思うが、違ったらどうしようとも思っていた。
「アルバス、この子はどちらにせよ、何らかの術がかけられているに相違ありません。記憶が無いとはいえ、何らかのことで思い出せるはずです。その度に激痛が走るなど……」
スネイプに続き、マクゴナガルが告げた。ダンブルドアはうーむと悩んだ。
「マダム・ポンフリーよ、このこを聖マンゴ病院へ送るべきじゃと、わしは思うのじゃが?」
マダム・ポンフリーは、すぐに答えた。
「私もそう思います。色々と、検査の必要があるやも知れませんから」
マクゴナガルもスネイプもそれに頷いた。
次の日、 ラヴィニアは聖マンゴ病院へと移されたのであった。外は酷い吹雪だったそうだ。そして、移されたことを告げられたのは、マルティナとエドマンドだけだった。
「早く帰ってきて……、ラヴィニア」
マルティナは、部屋の窓から外を眺めて呟いた。一人だけの部屋は、やけに広く感じられたのだった。