紅い少女
マーガレットの誕生、転生から2年後、ポッター夫妻には第2子、ハリーが生まれた。
マーガレットも、あの後何事もなくすくすくと育った。母のリリーに似た赤い髪、赤褐色の瞳を持っていた。毛先がくるくるとカールしているのは、父のジェームズ譲りである。
その頃、彼らはあの深緑の髪を持つ男、バルタザールとの約束は忘れていた。
なぜなら2人目の子のハリーが、『例のあの人』と呼ばれ、魔法界全てが恐れている闇の魔法使い『ヴォルデモート』に狙われているからである。長女のように、辛い思いをせず、無事に生まれてきた男の子。必ず立派な子に育てようと、幸せになるようにと願った矢先のことだった。ポッター家は、マーガレットとハリーの為に、ゴドリックの谷へと転居し、安全対策を怠らずにしていた。
はずだった。
ハリー誕生から1年後のハロウィーンの日。とうとう、事件は起こった。
ヴォルデモートがポッター家を見つけて、襲撃したのである。
ジェームズ、リリーは子供たちを守るために悪戦苦闘の末、死の呪文を身に浴びて死した。
残されたのは1歳の赤子と4歳の誕生日を迎えたばかりの女の子のみ。どうして大の大人、しかも誰もが恐れる闇の魔法使いであるヴォルデモートに抵抗できようか。
ヴォルデモートは、自分を恐れることなく己を見つめる赤子のハリーに杖を向けた。そして、死の呪文を唱えた。ハリーは死ぬ。誰もがそう思うような状況だった。
だが、なんということか。ハリーは死の呪文を跳ね返し、ヴォルデモートを消し去ったのである。
なぜ、1歳の赤子が魔法界で一番恐れられている闇の魔法使いに打ち勝ったのか。それは、誰も知らない。唯一、この赤子の記憶を見ることができる者だけわかるだろう。
これにより、ハリーは魔法界で『生き残った男の子』として、称賛されたのである。
一方、姉のマーガレットはというと。ポッター家の中、近所、公園、どこを探しても見つからなかったのである。
ヴォルデモートに何か不憫な目に遭わされたのであろう。魔法界の人々はそう思った。
魔法省は、『生き残った男の子』の姉をあちこちと探し、日刊予言者新聞等で情報提供を依頼したが、とうとう1年経っても見つけることはできなかった。
結果、彼女はヴォルデモートに殺された上、遺体をどこか遠いところへと移動させられたのだろうということで落ち着いたのであった。皮肉なことに、彼女が生きているなど誰も思わなかった。いや、思えなかったのである。
あのヴォルデモートという人物が、少女1人殺せないであろうか?いや、殺せるはずだと、誰もが信じて疑わなかった。