チリンチリンと、来客を知らせる鈴がなる。おそるおそるラヴィニアが入ると。
「いらっしゃい!」
店主らしき人が歓迎の言葉を言う。
「こんにちは、トム。相変わらず元気ですね」
マクゴナガルは知り合いのようだ。ラヴィニアはわからないので、先生の後ろへと隠れた。
「こりゃあ、マクゴナガル先生!よくぞいらしてくださった」
「ええ、マグル生まれの生徒を案内しなくてはならないので。また今度暇があれば来るでしょう。ラヴィニア、行きますよ 」
そう言って、マクゴナガルはすたすたと中庭らしき場所へと向かう。ラヴィニアは、来客の目線を浴びながら早足で後をついていった。行き止まりと思ったが、マクゴナガルが杖を出してレンガの壁を叩くと、積まれたレンガが自動で動きだして、アーチ状の入り口へと変化した。アーチの先には店が両脇に並んだ商店街があった。
「ダイアゴン横丁へようこそ、ラヴィニア」
「うわぁー!」
ラヴィニアは驚きと魔法の商店街へやってきた感激でその場を動くことができなかった。数十秒後、マクゴナガルに促されようやく足を動かすことができた。
見たことの無いお店や物品、建物をまるで幼子のようにあちこちを見渡しながら歩いた。
「さて、まずはお金を換金しなければ。マグルのお金では買えませんからね。グリンゴッツ銀行はすぐそこです」
お金は院長からたくさん貰ってきたため、とりあえずその全てを換金する。ラヴィニアは、自分の金庫をつくることにもした。
その後、マダム・マルキンの洋装店で制服を作り、他の店で授業で使う道具や教科書を購入した。その後、買い忘れが無いかとチェックをしていた。
「動物を連れていって良いんですか?」
『ふくろう、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい。』と、手紙の最後に書いてあった。
「ええ、その中なら。女の子は猫が多いですが、ふくろうの方が文通に向いてますね。あなたの好きなもので構いませんよ」
ラヴィニアは歩きながら考えていた。すると、目の前にペットショップがあったので、のぞいてみることにした。
そこには、フクロウがたくさんいたほか、ネコ、ヘビ、犬、ネズミ、その他諸々がいた。
ラヴィニアは端からよく見てまわっていった。すると、あるフクロウに惹かれたらしく、その場から動かなかった。そのフクロウは茶色い色で、鋭い目付きが特徴的だった。『アフリカワシミミズク、オス』と書かれた紙が脇にあった。
「この子がお気に召しましたか?」
店員が近くに寄って聞いてきた。ラヴィニアはΓはい」と答えた。
「先生、この子でも良いですよね?」
「ええ、勿論。この子はいくらです?」
そう聞くと、マクゴナガルはどこからか財布を取りだし、精算してラヴィニアへそのミミズクを買ってあげたのである。
「先生!そんな、いけませんよ。私の為に……」
ラヴィニアは、慌ててお金を取り出したが、既に支払ったあと。マクゴナガルはかごに入ったそのミミズクを手渡した。
「フクロウは高いのですよ。餌代もあるのですから。私からの入学祝いとでも思ってください」
「マクゴナガル先生……。先生がそう言うのなら、ありがとうございます……!この子は大事に育てます!」
Γそれでは、最後に杖を買いに行きましょう。オリバンダーの店が一番良いのですよ」
そう言って、案内されたところは、紀元前開業とかかれた古いお店だった。
チリンチリンと、来客を告げるベルがここでもなった。
「いらっしゃいませ、この子ですな。杖を購入しに来たのは」
小さな老人が奥から表れた。
出てきたのは、店主オリバンダー老であった。マクゴナガルはどこかと、ラヴィニアが見渡すと、店の端でイスに座って待っているようだ。
「お嬢さん、お名前は?」
唐突に聞かれたので、ラヴィニアはビクッと肩が跳ね上がった。
「あっ、……えと、ラヴィニア…、ラヴィニア・アルフォードです」
「では、Ms.アルフォード。杖腕はどちらかな?」
杖腕って?ラヴィニアはそう思ったが、すぐに利き手のことだと気付いて、右腕を差し出した。
「では、失礼」
そう言って、オリバンダー老は腕の長さを巻き尺で計り始めた。
計り終わると、店の棚をいじりだして、古びた細長い箱を持ってきた。中には杖が入っていた。
「楓にドラゴンの琴線。二十四センチしなやかで振りやすい」
ラヴィニアが杖をそっとつかんだところ、ボンッと音がして煙が杖からあがった。
「ふむ、なら次はこれじゃ。イチイの木にユニコーンのたてがみ。二十センチでしっかりしておる」
次の杖が出てきたが、ラヴィニアがさわる前に箱のふたが閉まってしまった。
「なに、よくあることじゃ。ではこれはどうかね?樫の木にに不死鳥の尾羽。二十八センチでしなりがよい」
今度こそ、と杖をつかむと、店の奥で爆発音がした。
「おやおや、これはまずい。ではこちらをお試しあれ。黒檀に人魚の涙。二十五センチ、良質でしなやか」
店がバラバラになる前に杖が決まりますようにと、ラヴィニアはおそるおそる手を差しのべた。だが何も起こることはなく、ただ暖かな光が彼女の周りに降り注いだ。
「ブラボー、ブラボー!これであなたの生涯ともになる杖はお決まりになった」
「これが、私の杖……!」
後ろではマクゴナガルがパチパチと拍手していた。
オリバンダー老に挨拶をして店から出てきた。日は沈む手前ぐらいの位置にあった。
「さあ、これであなたの魔法道具は全て揃いました。後は、9月1日に無事にキングス・クロス駅で9と3/4番線から発車する汽車に乗るだけです」
帰りがけに、マクゴナガルはそう告げた。
「9と3/4番線?聞いたことないです」
クスクスとマクゴナガルは笑った。
「ええ、ホグワーツに来る者だけを汽車に乗せるためにつくられたものですからね。その日は全校生徒がその駅に集まります。同じような荷物を持つ者を見つけて、ついていけば行き方はわかりますよ」
それに、とマクゴナガルは続ける。
「行き方を教えては面白味が無くなりますから、ふふっ」
これが、最初に見たときのミネルバ・マクゴナガルという人物の厳格なイメージが、ラヴィニアの中で溶けるようになくなった瞬間だった。
その夜、ラヴィニアはベッドの中で、どんな学校で、マクゴナガル先生の他に誰が居るのだろう、どんな授業をするのだろうかと思案しているうちに寝てしまった。ホグワーツで、どれほど沢山の辛くて、楽しい出来事が待っているとも知らずに。今はただ、9月1日になるのを今か今かと待ちわびるのである。