謎の声とパーティー
マーガレットは、先程までマルティナに支えられていたのと違い、誰かに横抱きにされていることに気づいた。うすら目を開けると、まず目に見えたのは黒いローブ。目線を移動させると、そこにはエドマンドの顔があった。
「エドマンド……?」
蚊のなくような小さな声でマーガレットは言った。
「ああ、気づいたのか?マルティナがお前を支えるのに疲れたみたいだから、交代したんだ。それで、マーガレットは謎の声が聞こえるみたいだが……何と言ってるんだ?そいつは」
エドマンドはゆっくりと寮に戻る道を歩く。マルティナはエドマンドの少し後ろについている。
「ん、殺してやる……とか、八つ裂きにしてやる……とかなんとか。さっきよりはっきり聞こえてくる……、そこの壁の中から……!」
マーガレットはそう言うと、近くの壁を指差す。エドマンドは、マルティナとアイコンタクトすると、壁の方に近づいた。そして、マーガレットが声が聞こえるという方向にどんどん進んでいった。
次第に、水の流れる音が聞こえてきた。と、同時に床が水浸しになっている。マルティナがなにかに気づいたようで、はっとした。
「……エドマンド、この先にあるのは嘆きのマートルがいる女子トイレよ。水浸しになってるのも理由が納得できるわ」
「嘆きのマートル?そいつの声が聞こえるってわけじゃないだろう?」
そう言って二人は歩みを進める。すると、見覚えのある人物が居た。
「……!」
「あら、ハリーたちじゃないの。絶命日パーティーに行ったんじゃなかった?」
そこに居たのは、絶命日パーティーに行ったはずの三人がであった。このような場所にいるのはおかしいと、マルティナはふと思ったのであった。
「その、……色々あって戻ってきたの!……ラヴィニアはどうしたの?体調悪いの?」
ハーマイオニーは、少し焦ったように答える。だが、エドマンドに抱きかかえられている人物を見て驚きの声を上げた。そのマーガレットはここに着いた頃に気を失ってしまったようで、エドマンドの腕の中でぴくりとも動かなかった。
「ええ、だから寮に連れ戻ろうとしてたの。ねえ、エド……!」
マルティナが同意を求めるよう彼に声をかけた。だがエドマンドは、壁の方を見て動かなかった。いや、動けなかった。それに、ハリーたちは気づいていたようで、そこにいた全員が目を離せなかった。
「な……んだよ、これ……!?」
そこには、赤いペンキで塗りたくったかのような文字が大きく書かれていた。
秘密の部屋は開かれたり
継承者の敵よ、気をつけよ
「いったいこれは……」
マルティナの顔は一瞬にして青ざめた。
そして、一同は脇にある松明にぶら下がっている不審なものを見ていた。よくみると、それは管理人の飼い猫、ミセス・ノリスだった。尻尾を絡ませてぶら下がっている。だが、それは石のように固まってそこから動かない。見開いた目がまさにいまに動きだしそうである。
「ここを離れよう」
ロンが暫くの空白のあと言った。
「助けてあげるべきじゃないかな……」
ハリーが哀れむような声で言うが、即座にロンは反対した。
「言うとおりにして、ここにいるところを見られない方がいい」
「そうだな、早く寮に……!」
エドマンドも同じ意見のようで、戻ろうとしたが既に後の祭りであった。
ハロウィーンパーティーが終わったのだろう、がやがやと楽しそうな生徒の声や、階段を上る足音が聞こえてきた。そして、この廊下の前まで流れてきた。
一番前に居た生徒たちが、固まって動かない猫を発見するやいなや、話し声や足音が一斉に止まった。そして、先にこの場所に居たハリーたちとマルティナたちは廊下のど真ん中に隔離されたように立っていた。
すると、この無音の空間に一人の声が響いた。
「継承者の敵よ、気をつけよ!次はおまえたちの番だぞ、『穢れた血』め!」
声の主はドラコ・マルフォイだった。頬を赤く紅潮させ、固まって動かない猫を見てニヤリとしている。後ろには、マルティナの弟、サミュエルの姿もあった。仲が険悪とはいえ、実の姉が犯人のようにされて驚いている。
「ティナー……!?」
昔はよく呼ばれていたその愛称に、マルティナは肩を跳ねさせて振り返った。
「サミュ……エル……?」