動き出す姉弟の歯車

医務室に着くと、マダム・ポンフリーが四人を出迎えた。

「まあまあ、こんなになるまでパーティーに?」

「いえ、寮に戻って休むと言ってたんですが、途中で気を失ってしまって」

エドマンドが慌てて訂正する。それを聞くと、仕方がないと言って近くのベッドに案内してくれた。

「ダンブルドア先生がここで待機しててと言ってたんですが、ここで待っててよろしいですか?」

マルティナがおずおずと訪ねた。マダムは暫く考えるそぶりを見せたが、すぐに了承してくれた。

「他に病人も居ませんしね、今回は特別に許しましょう」

「ありがとうございます」

そして、椅子を用意されたのでエドマンド、マルティナ、サミュエルの順に座った。

「さて、と。サミュエル、まずはあなたのことについて話してもらっていいかしら?」

うん、と答えるサミュエルは、歓迎会で見たときとは違って、年相応の少年という雰囲気で、歪んだ思考とは離れているようであった。

「叔父さんのところで預かられて以降、まともに話すのは初めてだね。まず、……僕はひたすら純血主義のことを詰め込まれた。これは確かだよ、毎日毎日飽き足らず、純血はすばらしい、純血が尊いってね」

弟の口から出てきた思いもよらない言葉に、マルティナとエドマンドは目を見開いた。

「まあ半分宗教のようなものでね、僕も純血主義に片足突っ込んでるよ。だから、少し批判的な目になってきてる。ティナーの友人が厭らしい者だと見えるときもあった。でも、この純血の貴族たちに付き合わされるのは面倒なことこの上なくってね。スリザリンじゃない、レイブンクローに入れば良かったかな?でも叔父に何されるかわからないし……」

弟の言葉に、マルティナはそろそろと近寄って彼の肩をつかんだ。

「じゃあ、じゃあ本当は……あなたは昔と変わらないサミュエルなのね?そうなんでしょう?」

マルティナは泣きそうな顔でサミュエルの前にしゃがみ、彼の顔を覗きこんだ。

「……まあざっくり言うとそうだよ、姉さん。今まで黙っていてごめんなさい。でも、叔父の目がどこで光ってるかわからなくて……。引き取られたばかりの頃、ティナーと普通に話してるところを見られたときに、ティナーと話さないようにと言うもんだから。僕は少しでもティナーと話したかったんだ。それには、僕と険悪な状態にするしか無かった。それなら、叔父も何も言わなかったからね。ほんとは、抱きつきたくて仕方なかったんですよ?」

わざと敬語を使って、彼はマルティナの柔らかい体に抱きつく。普段なら怒るマルティナだったが、今は彼女も彼をひしと抱きしめた。

「……そうだったのね。ごめんなさい、サミュエル。あなたのこと、全然わかってなかった」

目に涙を浮かべ、マルティナはほほえんだ。悲しいのではなく、嬉しかったのだ。弟と昔のようにまた仲良くできることが。

「でも、ティナーの怒った顔、なかなか可愛かったからなぁ、また怒らせようかな?」

ボソッとサミュエルの呟きが聞こえたのだろう、マルティナはイラッとして彼をまたべりべりと引き剥がしたのだった。

「まあよかったな、マルティナ。お前の弟との問題は、思ったよりも早く終結したぞ」

エドマンドは薄ら笑いを浮かべ、愉快そうに彼女の様子を見ている。

「はあ、そうね」

一息ついたマルティナは、エドマンドの方を見て柔らかな笑みを浮かべる。それを見て、サミュエルはたずねた。

「あの、……エドマンドさんは姉さんの恋人ですか?」

エドマンドは一瞬間抜けな顔をしたが、すぐに笑いだした。

「……ははっ、違うよ。ただの友人さ。心配する必要はないよ、サミュエル」

「そうですか。姉さんの恋人だったらどうしようかと、ホグワーツに着いてからずっと思ってたんです」

ほっとため息をつくサミュエル。姉をまだとられたくないようだ。

「えーと、失礼ですが、エドマンドさんは純血ではありませんよね?」

「エドマンドでいい。ああ、俺は違うよ。純血のアヴァロンなんて、聞いたことないだろ?」

「そうですね、失礼しました」

そう言って、サミュエルは頭を下げた。どうやら、そこらのスリザリンとは違うなとエドマンドはこのとき思ったのだった。そして、昔々のことも思い返していた。

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