動き出す姉弟の歯車
『兄さん、何故家を捨てるのですか!』
『うるせえ!大人しくて良い子な弟はアイツの言いなりにでもなってろ!』
『……僕は、…………』
「エ…マ……!エドマンド!」
エドマンドは、マルティナの甲高い声で現実に戻ってきた。深く考えていたようだ。
「っ!悪い、ボーッとしてた」
「もう、校長先生いらしたんだからしっかりして!」
その声に顔をあげると丸眼鏡をつけた長い白い髭を持つ老爺が立っていた。ダンブルドア校長だった。
校長はマクゴナガル教授、スネイプ教授と共に何故あの場所に居たかという理由を聞いてきた。それと同時に、管理人の猫、ミセス・ノリスが石化の呪いをかけられていたことを伝えた。
マルティナとエドマンドは、パーティーの途中にラヴィニアが体調不良となり、寮に戻ろうとしていたことを話した。そして、ラヴィニアに謎の声が聞こえていたことも。
「ダンブルドア、これは見過ごしておけません……」
マクゴナガルが蒼い顔で言う。スネイプもいつも以上に眉間にシワを寄らせていた。
「とりあえず、今晩は彼女には医務室に居てもらおう。マダム・ポンフリーにはそのようにとりはからってもらい、目覚めたときに異常がないか確認してもらおう。エドマンドとマルティナ、サミュエルはそれぞれ寮に戻りなさい。ちょうど寮監もおるから、安全じゃろう」
「わかりました、ではミスター・ヴィルヘルムス、着いてきなさい」
スネイプがサミュエルを連れて医務室を去ろうとした。
「はい。それじゃ……またね、姉さん。手紙、学校に居る間は出して良いから……」
サミュエルは名残惜しそうに姉の方を振り替えった。
「おやすみ、サミュエル」
マルティナは片手を彼に向かって振った。
「こちらも、もう行きましょう。二人とも、体調に悪いところはありませんね?」
マクゴナガルは心配そうに二人の顔を見た。
「問題ありません、教授」
「俺もです」
「よろしいでしょう、では塔まで行きますよ」
二人はマクゴナガルに連れられて寮まで戻った。グリフィンドールと言えど、事件のあった後ゆえか、談話室でお祭り騒ぎに発展してはいなかった。フレッドとジョージがリーとふざけていたぐらいである。
「あの猫と何か関係あるかしら?マッジの謎の声と」
「さあな、俺らには何も聞こえないんだ。どうしようもないね」
エドマンドはあっさりと言い捨てた。
「でも、私たち普通には聞こえないなんて、どんな魔法使ってるのかしら?」
マルティナは頭に手を当てて考える。だが、何も思い付かなかった。
「それもそうだな……。闇の魔術辺りが怪しいが、俺らの年じゃそんな高度な魔法は使えないはずだ」
「とりあえず今日はもう寝ましょう。明日、彼女が目覚めてから話し合いましょう」
マルティナが疲れたように言う。確かに、ずっと張りつめた空気を保っていたし、何より人一人を支えていたのだ。体力を削られるであろう。
「そうだな、それじゃあ俺はもうベッドに入るよ。おやすみ、マルティナ」
「ええ、おやすみなさい」