自己防衛はしっかりと
先日のクィディッチの日の夜に、秘密の部屋の怪物によると思われる二人目の被害者が出た。
被害者はグリフィンドール寮生の一年の男子コリン・クリービー。マーガレットは、彼がよくハリーに付きまとっていた事をよく覚えている。何かにつけてはハリーの写真を撮りたがる子だった。自分の正体を明かした暁には、彼につけ回されるのだろう、などと考えていたが。いざ、事件の被害者となるとあわれみの感情を持つのだ。
「怪物のターゲットは、マグルに関わるもの……なのよね?きっと」
昼食の席で、マルティナがおそるおそる言う。たまたま他の生徒があまりいない時間と言えど、やはり周りを気にするため、小声になる。
一方、隣でパスタを食べるマーガレットは、マグル生まれの扱いとなっている為、いつか自分も襲われるのではないかと恐怖を覚えていた。
「継承者の敵よ、気を付けよ……か。間違いなく、とは言い切れないがマグル生まれの生徒は危険だろう。フィルチの猫とたまたまマグル生まれの生徒が被害にあったという線があるが……。俺も完全に純血とは言えないから、危ないのは同じさ」
すかした笑みを浮かべながらエドマンドが言う。
「はあ、秘密にしてるけれど、おばあさまがマグルだもの。私も危ないのは同じ……。でも、どういう風に怪物はマグル生まれか否か見極めてるのかしら?そもそも、見てくれだけでわかるものなの?」
マルティナはふと疑問に思ったことを述べる。マーガレットも同じことを思っていた。どのようにマグル生まれの生徒か見極めているのだろうか?などと思っていると、エドマンドが推測だが……、と話し始めた。
「何者かが秘密の部屋を開けたことは確かだ。そいつが生徒の情報を集め、その怪物に指示するのだろう、と俺は思った。これなら不可能ではない」
「でも、もしそうだとしたら、犯人はこの学校の生徒、もしくは先生との誰かということになるわ。でも、そんなことする人いるかしら?」
マーガレットが、そんなことはあり得ないという顔をして言う。
仮にこの学校の生徒が犯人だとしたら、とても悲しいことである。そして、犯人がスリザリンの生徒だとも予想がつく。純血主義で、マグル生まれを排斥しようとするのはこの寮の生徒以外はあり得ないのだ(まれに違うのがいるかもしれないが、それは例外とする)。
「先生方がこんなことをするはずがない。ならば他に誰がやる?生徒以外他にあり得ない、それもマグルを忌み嫌う純血主義のスリザリン生以外な」
エドマンドがこう言いながらスリザリンのテーブルをちらと見やる。数名のスリザリン生がいるが、誰もこちらに顔を向けていない。向いていたら向いていたで、問題になるかもしれないので構わないが。
「ともかく、現在時点での推測はこれしかない。実際は違うかもしれない。たとえばこのホグワーツに侵入者が居て、それも闇の魔法使いだった、とかな」
「ちょっと!それはいくらなんでも……」
マルティナが抗議の声をあげる。マーガレットが、あまりに大きな声を出した彼女を抑えるために人差し指を立てて静かに、といさめる。不服そうな顔をしてマルティナが、だって……と口ごもりながら嫌そうな顔をする。
「だが、ダンブルドア校長がいるこのホグワーツにどうやって侵入するか……。まあ、そこまで考えたらキリがない。全部違うという可能性もあるが……」
エドマンドはそう言って紅茶を飲む。ずっと話していたから喉が乾いたのだろう。
カチャ、と静かに音がなってカップがテーブルの上に置かれる。目を閉じていた彼がまぶたを上げて口を開く。
「結論として、今の俺たちにできることは、まずない」
彼ははっきりとした声で言いきった。
マーガレットとマルティナは神妙な顔でお互いの顔を見合わせた。
「そう……ね。私たちじゃ、何もできないわ」
マーガレットが少ししょんぼりとしながら言った。
「右に同じね。まだ私たちの力では及ばない何かが、こんなことをしてるのでしょう……?ならば、立ち向かうなんて、そんなことは愚か者のすることよ」
「その通りだ。だが俺たちは、今できる最上級の自分に対しての守りを怠らないことだ。何もできないからといって、無防備でいるというのは愚か者を通り越している」
エドマンドの言葉にマーガレットがハッとする。彼の言うとおり、対策をしないのは危険だ。
「第一に、一人で行動するのは避けよう。二人以上なら、何かあっても助けをどちらかが呼ぶことができる」
「エドマンド……、よくそこまで頭が回転するね。私だったら何もできないってところで話が終わってるわ」
マーガレットが、ポンポンと思い付く彼の考えと頭脳に尊敬の念を抱く。
「……去年は散々だったからな。それに、先のクィディッチは、お前の弟は何者かに狙われていた。もし、マーガレット自身も何らかの事情で素性がバレたしよう。ハリー・ポッター関係でその犯人がお前を狙うかもしれない。そしたら、お前が無防備でいるというのは危険極まりない行為だ」
エドマンドは、それに理由をつけて返す。マーガレットは、その理由を聞いてウグッと、喉に声を詰まらせた。
「石になる程度なら、マンドレイクを現二年生が授業で育てているらしいから構わないが、死んだらもう何もできないからな。甦らせることは不可能だ」
ジョージとフレッドから、弟のロンからマンドレイクを育てているとの情報が入ったのだ。マンドレイクというのは、石になった生物を、蘇生することが可能なのだ。※マンドレイクの詳しい説明はここでは割愛させていただく。
「私たちもそんなものを育てていたわね……。って、とりあえず現状は自己防衛を怠らないってことでいいのね?」
「マルティナの言うとおりだ。さてと、授業の準備があるから、そろそろ寮に戻ろう。折角の飯がまずくなるようなこと話してすまなかったな」
席を立ちながらエドマンドが謝った。だが、二人は気にしてないようで。
「構わないわ、寧ろありがたいぐらいよ」
マルティナが笑いながら言葉を返す。
「エドマンドが言わなかったら、自己防衛しなかったもの……」
マーガレットが後ろに続けた。注意を促されなければ、確かに自己防衛をしようなどとはまず思わないだろう。
「私がこの三人の中じゃ、かなり危険度が高いもの。迷惑かけないためにも、自分の身は自分で守らなきゃ……」
「だからといって、一人で全部抱え込むのはダメだからな。なにかあれば相談はしろよな」
エドマンドが、一人で抱え込みそうな彼女に注意を促す。彼女はうん、とうなずくが、やはり抱え込みそうな雰囲気をかもし出している。
「マルティナ、同じ女子同士だ。ちゃんと見守っとけよ」
「ふふ、任せなさいな……って、言いたいけど私も強くないからなぁ」
マルティナはそう言うと、困った顔で腕組をして思案し始める。エドマンドはそれをみて、『結局俺がやるしかないのか……』とうなだれるのであった。