ハウトゥー決闘
あれから一週間が過ぎる頃、玄関ホールにある掲示板に、催し物を宣伝する紙が貼られた。
「『決闘クラブ』ですって、変わったことをする人がいたものね」
アンジェリーナが少し驚いたように言う。それにマルティナが続ける。
「こんなことするの、ホグワーツ入学以来初めてじゃない?」
クィディッチの練習がオフの日、アリシアとアンジェリーナの二人と共に、マルティナとマーガレットは久々に共に過ごしていた。
「やっぱり襲撃事件があったから……かしら?」
マーガレットがおそるおそると口を開く。他の三人も同じことを思っていたようで、それぞれうなずく。
「スリザリンの継承者だか怪物だかに、決闘なんて。……意味あるのかしら?」
マルティナが腕を組みながら半信半疑になる。
「さっき同じようなことを誰かが言ってたわね……。でも何も知らないよりは良いんじゃない?」
隣に立つアリシアが、気を高ぶらせるマルティナをなだめるように言う。
「とりあえず行ってみない?魔法使い同士の決闘なんて、あまり見ないもの」
アンジェリーナがどう?と三人に聞く。もちろん、皆はうなずいた。
「どの先生が主催したのかしら?やっぱり校長先生かな?」
「……あのナルシストじゃなきゃ誰でも良いわよ」
マーガレットの問いにマルティナが答えといえない返事を返す。今、アリシアとアンジェリーナは一緒にはいない。寮に戻る前に、図書室に用事のあるマーガレットがグループから外れようとした。一人歩きさせてはいけないという話を先日したゆえに、マルティナはそれに着いていくことにした。アリシアとアンジェリーナとはそこで別れた。
「ねえ、マッジ」
「なあに?」
マルティナは、先を歩くマーガレットが振り向いたとき、彼女の鈍い赤みを帯びた瞳と自分の金の瞳が合わさったのに気をとられた。
マルティナはたまに怖くなるのだ。彼女の鈍く光る赤褐色の瞳、あまり滅多に見ることのない赤い瞳が。
最初に出会ったときは、変わった色だなとしか思わなかった。髪と同じ赤い色。その程度にしか思わなかったのだ。だが、ずっと共に過ごしているうちに、いつしかその赤い目を怖いと思うようになった。マーガレットを始めてみたときから可愛い、と思っていたマルティナだが、成長するにつれて何か恐ろしいものに思えてきたのだ。
パーセルマウスを話せることを知った頃だったかもしれない。スリザリンの血を引いているなんて、彼女がそんな人とは思えない。でも、もしスリザリンの血縁者だったら?……ああ、こんなことを友人に対して思ってるなんて知られたら。などと考えていたので、マルティナは変に間を開けてしまった。
「……っ、…………やっぱ何でもない。ごめん、気にしないで」
「そう?何かあったら言ってね」
「うん。大したことじゃないから……」
何のこともない、普通の会話だった。だが、マルティナの心中は嵐のように荒れていた。
きっと、今この学校で謎の事件が起きているからに違いない。マッジがスリザリンの継承者なんてあり得ない……。私がおかしくなってしまったのかもしれない。
そう言い聞かせるように、マルティナは無理矢理に笑って見せた。前を歩くマーガレットは、そのことを知らずにすたすたと図書室に向かっていった。
その日の夜、大広間での夕食が終わったあとにそこで決闘クラブは開かれた。
「ラヴィニア、もっと前にいきましょう。ここからじゃあまり見えないわ」
「え、ああ……そうね。」
アリシアが背中を押して、一番前の列に躍り出る。アンジェリーナとマルティナも後に着いてきた。
「はあ、なんかこの装飾……、いやな予感がするんだけれど」
マルティナがため息をもらす。すると、聞き覚えのある声が隣から聞こえた。
「お、マルティナじゃねぇか。アリシアやラヴィニア、アンジェリーナも一緒だな」
「あら、ジョージとフレッドじゃない。リーとエドマンドも一緒ね」
マルティナが隣にたつ人物をみると、双子とそのルームメイトだった。
「うちの兄弟もきてるんだ。ほら、あそこにロンとハリー、ガールフレンドもいるな」
「反対側にはパーシーだ。でもジニーが見当たらないな……」
双子が手を望遠鏡のようにしながら辺りを見回す。全くもってどちらがどちらかわからないので、勝手にマルティナから見て手前の方をジョージ(仮)、奥をフレッド(仮)とすることにした。
「さて、誰が出てくるか楽しみだな」
「まあスネイプが出てくるなんて、天変地異が起こらない限りあり得ないな」
などと双子がケラケラと笑っていると、主催者が大広間の真ん中に設置された壇上にすがたを現した。