ハウトゥー決闘
その瞬間、キャーッという一部女子の歓声と共に、ゲッというその他大勢の生徒の心の声とでもいうのだろうか、嫌がるようなうめき声があがった。
出てきたのは某有名なナルシスト、ロックハートである。
「……マルティナ、予想通りだったね」
アンジェリーナが苦笑いしながら言う。マルティナは苦虫を噛み潰したような顔で壇上の男を睨んでいた。
マーガレットは、前のようにまた授業で呼び出されたりしないかと内心ヒヤヒヤしていた。間違っても、腕を元通りにすると言って実際は腕を骨抜きにするような、馬鹿な教師とやりあうのはごめんである。
ロックハートは相変わらずきらびやかに深紫のローブをまとっている。そして、その後ろに真っ黒な人物を従えている。
「見ろよ!スネイプが一緒だぜ!」
双子の片割れ、奥にいる方だからフレッド(仮)が叫んだ。
「あらま、スネイプ先生が……。ご愁傷様ね、ロックハートに捕まるなんて」
マルティナがため息をつくように言う。アンジェリーナは面白そうに笑いながらみている。いつも減点されてばかりで嫌みを頂いているグリフィンドール。たまにはあの人がやられるところも見たいというものだ。
「スネイプ教授が、決闘が上手いって話を聞いたことがあるわ」
マーガレットが思い出したかのように言う。それに「えっ」と驚きの声をあげる周囲の同級生たち。
「いつのこと?フリットウィック先生が若い頃に決闘チャンピオンだったという話は聞いたことがあるけれど、スネイプ教授なんて……」
アリシアがあり得ないというように尋ねる。だが、それはロックハートの静粛にと呼び掛ける声で咎められた。
そして、ロックハートがこの決闘クラブを始めるに至った理由を話し始めた。相変わらず長いもので、脇にいるエドマンドはあくびをしていた。
前の演説する様に話すロックハートの後ろで、スネイプは忌々しいとでも言いたいのだろう、いつも以上に顔をしかめていた。
そしていよいよ待ちに待った決闘の模範演技が始まった。
壇上の二人は一礼をした。ロックハートの方はカッコつけているのだろう、わざとらしく腕を振り上げて、社交ダンスを申し込む紳士のように大げさな礼をした。一方のスネイプは頭だけを下げるだけで、腰から曲げていなかった。
「……これが模範って言っていいのかしら」
「ラヴィニアに同意ね。実際にあんな礼をしたら一瞬で殺されそう」
マーガレットの言葉に、アンジェリーナが同意する。その隣では笑いをこらえきれない者が、必死に笑いを抑えようと頑張っていた。
「ハハッ、何あれっ!笑える……クッフフッ。サミュエルに見せてあげたいわ」
マルティナは、二人の一連の動作が笑いのツボにハマったらしく、肩を震わせて笑っている。
壇上では、それを気に止めない、いや、知らないと言った方が良いだろう。ロックハートが決闘の作法について説明を始めた。
結果として、決闘はスネイプの武装解除呪文で呆気なく終わった。ロックハートは、舞台から吹き飛んで壁に衝突してズルズルと滑り落ちた。滑り落ちた後も無様に大の字になって大広間の床に伏している。
マルフォイや数名のスリザリン生が歓声をあげる。ロックハートファンがガヤガヤと心配そうな声を上げるが、その他は笑って終わりだった。
マルティナがとうとう笑いをこらえきれなくなり、しゃがみこんだ。ここまで来ると、マーガレットたちの手に終えないので無視することとなった。エドマンドが憐れみの目線を彼の青い瞳から向けた。
そして、実戦が行われることとなった。
マーガレットは、ハッフルパフの男子生徒と当たることになった。確か、セドリック・ディゴリーという、ハッフルパフのクィディッチ選手だったか。などと思っていると手を差し出された。
「宜しくね、Ms.アルフォード」
「こちらこそ、Mr.ディゴリー」
「ああ、セドリックで構わないよ。ラヴィニアと読んでもいいかい?」
「ええ、構わないわ」
「じゃあ、改めて宜しくね、ラヴィニア」
そう言って笑う彼はとてもハンサムな少年だった。クィディッチのせいだろう、少し日焼けしているが、彼の顔は整っていた。随分前に夢の中でみた少年は、恐ろしいものを感じさせるものだったが、目の前の彼は全く正反対の優しいものを感じさせてくれる。