ハウトゥー決闘
そこで、ふと友人のことが気になり、辺りを見回す。すると、マルティナやアリシア、アンジェリーナたちもそれぞれ他の寮生と当たっていた。
「どうかした?」
セドリックが辺りを見回す目の前の少女の様子が気になってたずねる。
「あ、ごめんなさい。私の友達がどこにいったか気になって……。すぐ見つかったから気にしないで」
マーガレットが、心配そうな顔でたずねる彼に気づくと、すぐに謝って訳を話す。それを聞いて安心したようにセドリックが顔に輝きを取り戻す。
「それなら良かった。じゃあ、始めようか」
「ええ、お手柔らかにお願いします」
そう言って、二人は一礼をする。そして、お互いに杖を構えた。どちらも真剣な顔つきで見つめあう。相手に集中するせいで、周りの喧騒が聞こえなくなる。二人の決闘の世界に、他のものは何一つなくなった。
「― 一、― 二、― 三 !」
どちらも合わせて言う。
次の瞬間!
「エクス「エクスペリアームス!」」
お互いから紅の光線が放たれた。
バチバチっと火花が飛び散るとともに、煙が辺りを取り巻く。
ドスっと何かが落ちる音がした。
次の瞬間、マーガレットは自分が尻餅をついていることに気づいた。音が自分が倒れたことによるものだとわかり、羞恥で頬をピンクに染める。そして、自分の手に杖がないことにも気づいた。
「大丈夫か!?」
前方から足音が聞こえてきた。
煙の先から、セドリックが姿を現す。彼の手をみると、彼の杖の他に杖があった。よく見ると、マーガレットの杖が握られているのがわかった。
「……ふふ。私ったら、セドリックに負けちゃったのね」
マーガレットは笑いながら立ち上がり、ローブについた誇りを払う。セドリックは、彼女が倒れていたのだとわかり、怪我をさせてないか心配で躍起になった。
「ラヴィニア、倒れたのかい?どこか怪我してないか?」
「大丈夫よ。尻餅をついただけ。それにしても、セドリックの動き速かったわね」
マーガレットは、彼の思考回路を変えようと違う話題を持ち出した。
「……ああ、呪文を少し速く言うように心がけたんだ」
などと、セドリックは説明をする。それを見て、マーガレットは彼はとても努力家なのだなと思った。自分もそうしようかなどと思った矢先。
少し離れたところで生徒が模範演技を行うようだ。ワイワイと喧騒が先程より大きくなっている。
「気になるな、見に行ってみようか」
「え、……ええ。そうね」
そう言うが早いか、セドリックは彼女の肩に手を回してやさしくリードした。いきなりのことにマーガレットは驚きと羞恥で顔をうつむけていた。
そして、その模範演技の生徒の姿を目にしてマーガレットはまたも驚いたのだ。弟、ハリーとまさかの因縁の相手、スリザリンのドラコ・マルフォイだったのだ。
そして、決闘が開始した。マルフォイが呪文をすぐに唱えた。
「サーペンソーティア!ヘビ出でよ!」
なんと、マルフォイはヘビを出してきたのだ。辺りの生徒たちが悲鳴をあげる。
マーガレットにはヘビが怒っているのが、ヘビの言葉からわかった。だが、周りからすればヘビの声が聞こえると言うのは異端者に見られることも知っていた故に、ただそれを見ているだけだった。
『シェーシャ、シェーシャいるの?』
『ああ、マーガレットか。久しぶりだな』
例の、必要の部屋のときにエドマンドが魔法で出したヘビ、シェーシャ。あの日の一週間後に森の入り口で再会を果たした。
『どう?森で暮らしていけそうかしら?』
『うーむ、今の季節はまだ良いが、冬場は厳しいな』
シェーシャの言うとおり、真冬のイギリスは雪に包まれてしまう。
『やっぱりそうよね……。じゃあ私のところに来る?今のところそれしか……』
マーガレットが目を悲しげに細めて言う。シェーシャは暫くそれを見て思案するように首をうつむける。
『それしかないな……。だが、今からそうするのも辛いだろう。後数週間こちらで過ごす。それまでに、私が暮らせるようにしといてくれ』
『シェーシャ……、そうね。じゃあ、後一ヶ月したら迎えに来るわ』
『宜しく頼む、マーガレットよ』
今日か明日の夜にでもシェーシャを迎えに行こうと考えていたマーガレット。それ故に、呼び出されたヘビのことを考えて悲しくなった。呼び出されたヘビの最後は消されるしかないのだから。
そして、目の前で信じられないことが起こった。
ロックハートが間違えた呪文を使い、ヘビの怒りを更に増長させたのだ。そして、起こったヘビはハッフルパフの少年に今にも襲いかかりそうになった。
その瞬間。
『ーーー』
ハリーが何かをしゃべった。だが、それはパーセルマウスでない人たちから見たもの。
『手を出すな。去れ!』
マーガレットは、目を見開いた。
ハリーが蛇語をしゃべったのだ。
そして、周りがざわつき始める。ハッフルパフの少年はハリーに怒鳴ると、走ってその場を離れた。ハリーの方は、何が起こったのかわからない様子で辺りを見回している。それを見た、彼の友人のロンが手を引っ張って消えていった。
「…………彼も、パーセルマウス……!?」
思わず、口から言葉が漏れてしまい、慌てて自分の手で口を塞ぐ。それに、隣のセドリックは気づいたようで。
「……ラヴィニア、顔色が悪いけど。……医務室に行く?」
「……良いわ、もう寮に戻るから……。ありがとう、セドリック。また機会があればあなたとお茶をしたいわ……それじゃあ」
そう言って、マーガレットは逃げるように立ち去った。
寮に戻り、自室に入ってすぐにシャワーを浴びる。シャワールームから出ると、パジャマに着替えてベッドに腰かける。マルティナたちはまだ帰ってきていなかった。まだ、決闘クラブは続いているのだろうか?
レナードが、アナベル院長からの手紙を持ってきてくれていたのか、近くのテーブルに手紙が置かれていた。懐かしい筆跡を見ても、彼女の心は落ち着かなかった。
そして、小さな橙の明かりだけつけて、他の明かりを消す。ベッドに潜り込んでひたすら寝ようとした。
心臓の音がやけにうるさく聞こえる。
―実の弟も、パーセルマウスだなんて。
―私の血に、スリザリンのものが流れてるの?
ただただ、恐ろしかった。ハリーの家族だと明かせば、自分も彼のように恐ろしいものを見る目で見られるのではないかと。先程の蛇語を話せるところは、ほぼ全校生徒が見ていたに等しい。
マーガレットは、明日からの学校生活がひたすら怖いものにしか思えなかった。
「シェーシャ、ごめん。明日……迎えに行くね」
そう呟いて、マーガレットは目を閉じた。