私の思い

決闘から一夜明けた朝。

周囲はハリー・ポッターが秘密の部屋の継承者ではないか?との噂で持ちきりだった。学校のほとんどの生徒がその話題を話しているのだろう、どこを歩いてもパーセルマウスだ継承者だスリザリンだと聞こえてくる。

マーガレットは、彼が継承者な訳がないと信じていた。だが、その一方で何故自分と彼はパーセルマウスの能力があるのか?と謎に思っていた。それと同時に、ハリーのことがとても心配になった。現在、彼を信じているのは友人のロンとハーマイオニー、グリフィンドール寮の一部だけだったのだ。



マルティナが、朝食のときにマーガレットをフォローするように話題を色々持ちかけたり、歩くルートを変えたりしてくれた。だが、どこでもハリーへの中傷の言葉は止まなかった。エドマンドはフレッドとジョージと共にハリーを守ってくれているようで、継承者のことを深く考えさせないようにと進言していた。

「それにしても、ハリーが蛇に向かって"あの男の子に手を出すな"、と注意してなんてね。私には"もっとやれ!"って言ってるように見えたわ」

必要の部屋で、マルティナがマーガレットに当時のことを話す。ここなら、他の生徒に聞かれる心配もないので堂々と会話を進められた。テーブルとイスを三つずつ、紅茶のセットも三つずつ用意されたその部屋は、彼ら専用の会議場所となっていた。

「でも、ハリーはそんなことしないわ!……あの子は他人を傷付けるようなそんなことはしないし、蛇には"手を出すな"って、そう言ってたもの」

マーガレットは、口を尖らせる。

脇にいるエドマンドは、ただ思案をしているだけで、二人の会話に割り込むことはなかった。

暫くマルティナとハリーのことについて話していると、エドマンドが突如立ち上がって言い放った。

「もうその話はよせ」

「エドマンド……?」

マーガレットがどうして?とたずねた。

「彼が継承者でないのは、ここにいる三人の中ではもう既知のこと。これ以上の思案は無駄だ」

そう気づいたんだ、と言うと彼はしかめっ面のまま椅子に座って、「それに」と言葉を続ける。

「あいつが継承者なら、既にマグル生まれのハーマイオニー・グレンジャーと縁を切っているし、入学時にスリザリンに振り分けられてただろう。純血主義の思想を持ってるのに、グリフィンドールに入れるわけがない。スリザリンでないにしても、あり得そうなのはレイブンクローだろう」

「確かにそうね……、レイブンクローには悪いけど」

マルティナが同意するようにうなずいた。エドマンドの言うことは、実際にあることだ。

「ここの生徒たちも噂好きなだけで、ハリーが継承者だなんて本気で信じてるのは多くいないだろう。信じるのは、大方マグル生まれの連中に違いない。魔法界でハリー・ポッターのことを知らない者はいない。大の闇の魔法使い、ヴォルデモートを亡き者にしたも同然なのだから」

マーガレットは、彼の言うことに違いはないと信じて、自分に言い聞かせた。

「それにしても、あなたの弟はトラブルメーカーみたいな感じね……。去年はトロルに賢者の石、今年は車でド派手に登場からのスリザリンの継承者扱い。正体、去年明かさなくて良かったわね」

マルティナがクッキーを片手にしゃべる。マーガレットは、それに対してそうねと悲しげに呟く。

ハリーの姉だと告げていたら、今頃は姉弟で継承者騒ぎの的になっていたのだろう。こそこそ、ひそひそと噂され、鋭い視線でこちらを見られるのだろう。

などと、リアルに考えてしまったが、本来ならそうなっているのだ。注目を集めやすい人物なのだ、もういい加減諦めなければ……。

「…………それでも今年度の終わりには、明かすつもりよ」

「何ですって!?……マーガレット、本当に良いの?いくらなんでも、リスクが大きいし、明かさないって選択肢もあるのよ?」

マルティナは、目をこれまでにないほど見開いて彼女の方へ首を向けた。ハリーの現状を考えてみれば、姉だと明かすのはかなりリスクやデメリットが多い。メリットと言えば、本当の家族に戻れるということだけであろう。それに、今年度の終わりにこの事件が解決しているとは限らない。そのことをマルティナは危惧していた。

「それでも、私は彼のことを他人として見ていられるほど、もう薄情な人間でいられない。ただ見ているだけなんて本当は嫌なの。クィディッチで腕を怪我したときや、昨日の蛇語事件だって、私は彼に駆け寄って助けてあげたかった。あなたは悪くないって、そう言ってあげたかった。彼と距離を置くようにしたのは、私が彼の身内だと、居なくなった姉だってバラしてしまいそうだったからなの!リスクやデメリットなんて考えないで、本当の家族になる。それが一番だと思えるようになったのよ」

ずっと、心に秘めていた思いを述べるマーガレット。クィディッチの一件以来、彼女はハリーに関わらないようにしていた。実際に、一年の三人とたまに遭遇してもおはようなどと挨拶を交わすだけで、会話に発展したことは一切なかった。ハーマイオニーが、たまに授業でわからないところを相談するために話すことはあっても、ハリーとロンとは一切話さなかった。

「マーガレット…………」

マルティナは、マーガレットがここまで思い詰めていたなどとは予想だにしていなかった。ハリーが視界に入る都度、マーガレットは表情こわばらせる。その度に相談してね、とときたま声をかけていたが彼女は大丈夫、と答えるだけだった。無理に聞き出すのもためらわれたので、マルティナはその言葉を信じていたのだ。

「ハリーは今、奇怪な視線を沢山浴びているわ。なのに、私は何も手助けしてあげられない。ラヴィニア・アルフォードでは、彼の助けになることはできない。ただの年上の同じ寮の異性が、ほぼ関わりの無い後輩に駆け寄って抱き締めるなんて、そんなことできないわ、できるはずがないの!」

手を胸の前に出して、そっと顔を覆う彼女の声は、悲痛に彩られていた。

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