私の思い
「……マーガレット、本当にそう思ったのならまずはダンブルドア校長に相するべきだ。だがその前に、お前の事情を知っているマクゴナガル教授やスネイプ教授にも話を通さなければならない」
口を閉ざしていたエドマンドが割り込む。今にも泣きそうなマーガレットは、そうだわ、とうつむかせていた顔をあげる。
「ありがとう、エドマンド。我を忘れてしまってたわ……」
ほっと、マーガレットは安堵の色を浮かべる。
「……ともかく、継承者は別にいるんだ。何にしても、すぐにスリザリンの怪物について調べをいれるべきだな」
「スリザリンの怪物……」
「ああ、被害者はこれからも増えるだろう。ハリーが容疑者にあがったんだ、彼に濡れ衣を着せようとするようなことを考えるヤツなら、次の被害者を出してきておかしくない。そもそも、マグルを排斥させようとしているんだ、まだこれからも被害者は出てくるだろう」
そこで、一息置く。
「次の被害者が出たら、俺は怪物について調べ始めようと思う。まだ証拠が少ないからな。ただ、蛇の類いなのは確かなのはわかってるから、容易だろうと思いたい」
そう言うと、エドマンドはテーブルに置いてあるカップの中身を飲み干した。
「二人もやるか?」
勿論、怪物について調べることを、だ。
二人の答えは言わずもがな。
「当たり前よ!抜け駆けはさせないわよ?」
「ええ、ハリーが濡れ衣だってこと、私が証明してみせる!」
やる気満々の二人を見て、エドマンドは薄く笑みを浮かべた。
ところが、そんな風に闘志を燃やした彼らのもとに、ハリーが継承者だ、と追い討ちをかけるように事件が起こった。
必要の部屋からグリフィンドール寮に戻る際、ざわざわと騒ぐ団体がいた。
「ポッターが継承者なのは本当なのね!現行犯でマクゴナガル先生に連れられていったもの!」
「みたか?昨日の蛇に襲われかけてた生徒を!首なしニックと一緒に石になって固まってたんだ!」
「ゴーストまで石にするなんて……、ポッターはやっぱおかしいんだわ」
「蛇語を話すなんて、闇の魔法使い以外ありえないもの!」
マーガレットは、突き刺さるような言葉を耳にしてしまった。思わず、彼女は足を止めてその場に立ち尽くした。
エドマンドはそれにも関わらず、先に進むぞ、と一言そう言って歩き始めた。
「どうやら、被害者が出たようだな」
低い声でエドマンドは話す。
「今の子たち、ハリーが現行犯だって言ってたわ!エドマンド、どうする?」
マルティナの問いに、彼は足を止めて壁際による。そして、マクゴナガルによって校長のもとに連れていかれたという主旨の話を聞いた。
「ダンブルドア校長が、彼が犯人ではないと信じるのを祈るしかない。だが、まさかここまで早く手を出すとは……」
腕を組み、壁に寄りかかるエドマンドに、マルティナもマーガレットも悲しげに見るしかなかった。
「Ms.アルフォード!!」
そこへ、低い声がマーガレットを呼んだ。こちらへ、早足で駆け寄ってくるのは、黒いマントをはためかせてくる男。
「スネイプ教授……」
マーガレットの口から思わず声が出た。
「Ms.ヴィルヘルムスに、Mr.アヴァロンか。急いでいるので説明する暇がないが、Ms.アルフォードをかりるぞ」
「え、……はい。どうぞ」
「………………」
マルティナが少し驚いているが、エドマンドは無表情でそれを見ていた。
「Ms.アルフォード、行くぞ」
「あ……、はい」
そして、彼女はマクゴナガル教授の元へと連れていかれた。そこには、ダンブルドア校長もいた。
「おお、セブルス。ラヴィニアを見つけられたようじゃの」
「ダンブルドア、喜んでる場合ではありません。セブルス、彼女をこちらへ」
三日月のように目を細めて笑うダンブルドアに、強ばった表情のマクゴナガル教授。ここにいる教授に共通するのは、ラヴィニア・アルフォードの正体を知っているということだ。
「先生方、私に何か…………?」
マーガレットは、おそるおそる口を開いた。その声は、彼女自身が思ったより小さな声だった。
「Ms.アルフォード……いえ、Ms.ポッターと、この場合お呼びした方がいいでしょう。あなたの弟、ハリー・ポッターについてお話があります」
「……ハリーについて?でも、私は彼にまだ正体を明かしていません」
「ええ、そのことはわかっております。ですが、あなたにお話しした方が良いと……ダンブルドア校長がおっしゃったのでお呼びしました」
マクゴナガル教授が、緊張した顔で言った。
「さて、ラヴィニア……いや、ここではマーガレットと本名で呼ぼうかの。お主、ハリーが此度の事件の犯人だと、そう思っておるかね?」
老爺のきらきらとした青い瞳からの視線が彼女を射ぬく。赤い髪の少女は、いきなりの質問に狼狽したがすぐに答えた。
「いいえ、思ってません。彼が犯人なら、とっくの昔にスリザリンに振り分けられてたはずです」
教授たちは、彼女のはっきりとした答えに目を見開いた。去年まで綺麗さっぱりに記憶がなく、弟の存在も知らなかった彼女。記憶を取り戻してほぼ一年になろうとしている今、彼女の中でハリーという少年の存在は大きなものとなったことがわかる。
ダンブルドアは、それを聞いて驚いていたが納得したうにうなずいた。
「そうかそうか、マーガレットは彼が犯人ではないと信じておるのだな。ならばよろしい。血を分けた兄弟だ、信じてやるのが、彼にとっても良いことになろう。わしも、ここにいる教授たちも皆、彼が継承者だなどと信じておらぬ。そなたも安心しなさい」
そう言ったダンブルドアの顔は、どこか寂しげで悲しげだった。だが、マーガレットは、さして気にすることもなく、はいと静かに返事をしただけだった。