四年生の始まり
「また長時間揺られるのねー。ほんと、身体中が岩になりそうだわ」
「魔法で瞬間移動するのかと入学当初は思ってたけど。随分古臭いのものね、そこが良いのかもしれないけれど」
9月1日、新学期が始まるホグワーツに通うためのホグワーツ特急内。 マーガレットとマルティナは登校方法について語っていた。今どき汽車を使ってるなんて、何か特別なこと―記念日、期間限定のイベント―でも無い限り、あり得ないのだ。
「マグルの技術の方が、余程進んでると私は思うのよ。古いのも私は素敵だと思うし、好きだけれど……ね。魔法は便利だけれど、なにか物足りないわ」
「ふふ、でもあなたの家族が純血主義者だから……こちらに来るのは、ずっと先になりそうね」
「父があまり良い顔をしないけれど、母は寛容だから大丈夫かな。でも、あなたは孤児院に住んでるから、遊びに行くのは申し訳ないわ。卒業後にゆっくり行かせてちょうだいな」
そのときを楽しみにしてるよ、とマーガレットは答えると、車窓から見える風景を眺めた。マルティナもすることがないというように、マーガレットの連れてきたミミズクのレナードを撫でた。レナードはマルティナに撫でられるのを気に入ったのか、気持ち良さそうに目をつぶっている。
そんなのどかな雰囲気のなかに、焦ったようにドアをノックする音が響いた。どうぞ、と答えるとガララと音をたてて戸が開いた。
「いきなりごめんなさい、私は人探ししてるの……って、マーガレットとマルティナじゃない!」
そこに居たのは、今年二年生に進級するハーマイオニーだった。
「ハーマイオニーじゃないの!夏休み以来ね」
「相変わらず可愛いわね、ハーマイオニー。誰を探してるの?」
マーガレットとマルティナがそれぞれ抱きつきあった。マルティナが誰を探してるのかたずねると、ハーマイオニーが忙しなく答える。
「ハリーとウィーズリー一家と一緒に来たのに、姿が見えないの。柵を越えるとこまで一緒だったのに……」
ハーマイオニーは肩を落とし、しょんぼりと落ち込んでいる。確かに、コンパートメントを探す途中、赤毛の集団を見たかもしれないが、そこまで細かく見てはいない。目に映り込んだだけなのだから。
「残念だけど見てないわね。マルティナは?」
「私もよ。フレッドとジョージのところはどう?」
「お兄さんたちも見てないそうなの。ああ!無事にのってるかしら?もう少し探してくるわ。ありがとう、二人とも」
そう言うと、ハーマイオニーは駆け足で他のコンパートメントへ探しに向かった。汽車が発車してから大分時間が経過している。もし彼らが乗り遅れてたら大変だ、とマーガレットは思った。
ふと、マーガレットが車窓から空を見上げると青い物体が見えた。まばたきを繰り返してよく見ると、車のようにも見える。まさか、車が空を飛ぶなんて……。そんなことあるわけ無いなと目線をずらし、緑の景色を眺めはじめた。
「……今年は何も問題起こらなきゃいいわね」
マーガレットがため息混じりに呟いた。
「そうねぇ、去年は散々だったもの。夜中にフィルチに追い掛けられるのは、二度と味わいたくないわ。あれはホラー以上の恐怖よ!」
マルティナがそれに恐れおののいた表情で返す。
そんなマーガレットとマルティナの望みは、儚くもこの夜に打ち砕かれたのであった。二人は失念していたのだ。今年の教師がとても嫌な男ということを。そして、その彼が迷惑な騒動を起こすだろうと予測しただろうか?いや、しない。