この世で一番……な男

四年目のホグワーツ生活がスタートした。闇の魔術に対する防衛術の担当教員以外は変わらないため、それほど緊張することもない。違うことは、習うことが毎年難しくなっていくことぐらいだろう。

さて、その新しい教員のロックハートの授業だが。一週間も経たない内に、もはや授業と呼べないものだというのが、全ホグワーツ生徒(ロックハートに魅了された者除く)の中で決定したのであった。

ロックハート著の本は、分厚いだけの中身はスカスカなものである。なので、マーガレット、マルティナ、エドマンドたちは今まで使っていた教科書を読んでいた。授業中も、ロックハートの本ではなく、今までのを読んでいれば良いやという考えのもと、そうしたのである。

だが、最初の授業で思わぬ展開となったのである。なんと、ロックハートはいきなり自分の本の中身からテスト問題を作り出したのである。そのために、本を読んでいない生徒たちにとっては、回答を書くことはおろか、見たことのない文章まで出る始末である。

「ねえ、マルティナ」

マーガレットは、小さな声で隣に座るマルティナにたずねた。

「なにラヴィニア?私は、凄く頭が痛くなってきたのだけれど」

「この問題解かなくて良いかしら?」

「いいんじゃないの?」と、答えるマルティナの方は解答欄に○×を記入する有り様である。誰がこんなものを書くかしら?と隣でぶつぶつ呟いていた。後ろの方では、フレッドとジョージがテストの用紙を折り紙のようにして、遊んでいるのが見えた。

テストが終わり回収されたのち、ロックハートが簡単に用紙に目を通していた。するとまあ、満点が居ると言ったのである。よくやるなあ、と他のものが思っているとスリザリン寮生の一人だった。 マーガレットたちがその生徒を見ると、その生徒はロックハートの方に、キラキラとした眼差しをひたすらに向けていた。

「あの子……、完全に魅了されたのね」

「……みたいね」

マルティナはドン引きした顔をして、彼女を見やった。グリフィンドール生も、何人かの女子が似た状況であった。あの男のどこがいいのか、教えてほしいものである。

さて、そんなテストの後は授業があるわけだが。全くもってこの男はアホなのかバカなのか。もちろん、この男というのはロックハートである。

いったい何を考えて教師になったのか、詳しく教えていただきたい。と、魅了されていない生徒は思ったはずだ。いや、思わない方がおかしい。

マーガレットたちが聞いた話では、ハリーたち二年生の授業では、ピクシーを教室に放ち、自分で捕らえることができず、生徒たちに丸投げしたそうだ。それ以来、実技はやらなくなったようだと他の学年から聞いた。

実技をやらなくなったのはある意味、ロックハートが教師としての授業に関してはは正解だ。生徒に丸投げなど聞いたことがない。結果が座学になったわけだが。やはりというか、ロックハート著の役立たずな教科書を音読するという、なんとも腑抜けたものである。しかも、ロックハートのわざとらしい演技つき。

これなら去年のクィレルの方が、教師としてはましである。だが、クィレルはどもって聞きずらい上に、ニンニク臭くなるという嗅覚と聴覚にダメージが大きいのである。それを考えるとどちらも五十歩百歩だろう。

「睡眠学習の時間になりそうね」

ふあぁ、とあくびするマルティナだが、後ろのエドマンドはとっくに睡眠学習を始めている。マーガレットもこれにはうなずいた。あのくだらない演技を見て、どうやって『闇の魔術に対する防衛術』を学べというのか。持ってきた昔の教科書を読んだ方が、少しは足しになるだろう。

何人かは諦めたように音読をしているが、口パクのものもいるようだ。すると、何故かロックハートがマーガレットを見つめていた。

「そこの赤毛のお嬢さん!私とともにこの狼男との大いなる山歩きの演技をしましょう!」

グリフィンドールに赤毛のお嬢さんなんて、マーガレット以外いないのである。フレッドとジョージは男である。

「さあ、私に狼男から助けられる憐れな少女の役です!」

「……いったい何をしろと?」

「狼男に捕らえられていれば、後は私がやりますのでご心配なく!」

嫌な予感が、彼女の頭をよぎる。だが、断る理由もないためにその申し出をうけた。

「なんてことだ!お嬢さんを拐っていこうとは……」

なんとまあベタな展開なのだろう。マーガレットは、現在狼男役の少年に取り押さえられており、ご丁寧にがっちりとホールドされている。さて、そんな中ロックハートは、つらつらと何か言葉を並べている。さっさと早く助けなくて良いのか?と、マーガレットは思っている。臨場感出すためにと、つま先立ちをさせられているために、足が辛いのである。おまけに首に狼男役の腕がまわっていて、窒息はしないだろうが気分が悪い。

その頃、生徒たち観衆は、予想外の役者に目を向けた。マルティナは面白そうに目を向けている。一番後ろの方のフレッドとジョージは、一つ前で机に突っ伏して寝ているエドマンドを揺すり起こした。

「おい、起きろよ、エドマンド」
「ラヴィニアが役者だぜ?」

「なんだよ……こちとら眠……!?」

エドマンドが体を起こして嫌々ながら目を開ける。すると、教壇上で男に拘束されているマーガレットの姿と対峙するロックハートが脇に見えた。

これはまずい、と脳裏をよぎったエドマンドは杖を持ち、立ち上がる。そして、杖をマーガレットを拘束する狼男役の男に向ける。

「ロコモーターモルティス!」

彼は足縛りの呪文を唱えた。観衆だった生徒たちはエドマンドの方を驚きの目で見る。前を見ると、狼男役は倒れて、マーガレットは驚きの目で倒れた男を見ていたと同時に、エドマンドも見やった。ロックハートはいきなりのことに、目をぱちくりとしていたが、すぐにエドマンドを注意した。

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