この世で一番……な男
「Mr.……えー、あー、……アヴァロンでしたか?演技に口出しするとは、いけませんよ。確かに囚われの身の女子生徒が危ないと思ったのは、勇気ある素晴らしい行動ですが…………」
「ちっ、始まったか」
エドマンドは舌打ちをした。ロックハートという男は、話し出すとそれはもう弾の切れることのない、マシンガントークが始まるのである。
だが、運良く授業の終わりを告げる鐘がなったため、サッと身を翻して教室を去った。
マーガレットは、狼男役の足縛りを他の呪文で解いた。すると、アリシアとアンジェリーナに駆け寄られ、心配されていたので、教室を立ち去った。教科書は、マルティナが運んできてくれた。
「ラヴィニア、大丈夫?ずっとつま先立ちをしてたでしょう」
「ロックハートがあなたを指名したとき、ひやひやしたわ」
アリシアとアンジェリーナは、つま先立ちをしていたのを見ていたらしい。ロックハートに夢中になってない彼女たちで良かったと、マーガレットは思った。マルティナが早く自分の教科書を持ってとせがんだので、すぐに教科書を受け取った。
「エドマンドもやるわね、あの人が後ろで寝てたのをフレッドとジョージが起こしたのよ。そしたら、すぐに杖を持って呪文を唱えたでしょう」
「どうして双子がおこしたのわかったの?」
アリシアがたずねた。
「双子が起こしてる声が聞こえたのよ。皆前の演技に釘付けだったんでしょう?」
それもそうか、とアンジェリーナが言う。そして、寮に帰る道をたどった。
マーガレットは、エドマンドが自分を助けてくれたことに、感謝しているが驚いてもいる。彼が寝起きなのは、目の端でとらえていた。あの素早い行動は、すぐにできるものではない。と、そう思っていたのである。
「ラヴィニア、大丈夫?さっきのでどこか痛めた?」
隣にいたアリシアが、心配そうにたずねた。
「……ああ、大丈夫。考え事してただけ」
「そう?無理はしないでね」
マーガレットは、この優しい友人たちに自分の本当の名前を明かしてないことに申し訳なさを感じた。早く明かさなきゃと思う気持ちと、まだ納得できない二人の自分にジレンマを覚えたのであった。
「……やっちまった」
その頃、グリフィンドール寮の自室で、エドマンドは頭を抱えていた。ルームメイトは、悪戯を仕掛けるためにここにはいない。
さきほど、寝起きとはいえ、マーガレットが捕らえられていたことに焦りを感じた。
「……失うことが、こわい」
ベッドに横たわると、左腕で目元をおさえる。おさえた目元には、過去の記憶が鮮明に映し出される。
過去に失ったもの。いや、失いかけたもの。なくなる寸前に助けることができたもの。それは今も元気だろうか?もう、帰らない、帰ることができないあの家。
少年は、自分の過去を思い出す。二度と繰り返さない為に。