とある休日の朝
新学期始まって最初の土曜日の朝、マーガレットが朝の六時前に起きた。いつも通りに起きて顔を洗い、着替えようとすると、左隣とその隣のベッドがもぬけの殻になっていたことに気づいた。アリシアとアンジェリーナのベッドである。こんな朝早くから居なくなるなど今までなかった。
「どうしたのかしら……?」
マーガレットが頭上にはてなマークを浮かべてかんがえていると、サイドテーブルに白い置き手紙のようなものがあることに気づいた。近くに寄り、それを手に取ると、速書きしたのか寝起きのせいなのか知らないが、雑な文字が書かれていた。
『マルティナとラヴィニアへ
クィディッチ馬鹿のせいで早朝練習することになったの。朝起きて、私たちが居なくて驚いたでしょうけど、そういう訳なんで心配しないでください。
byアリシア&アンジェリーナ
ps.もし暇なら練習見に来てね。できたら、何か軽い食べ物を持ってきてくれると助かるわ。朝食を食べる暇がなさそうなの』
クィディッチ馬鹿とは、十中八九キャプテンのオリバー・ウッドのことだろう。彼ならこの無茶ぶりをしてもおかしくはない。今日は特に用事もないため、追伸にある通りに、彼女たちに朝食を持っていってあげようかなどとマーガレットは考えていた。その後、マルティナが起きるまで、暇潰しに部屋で本を読むことにしたのであった。
十五分もしない内にマルティナが目覚めた。マルティナが着替える間に、マーガレットはアリシアとアンジェリーナの事を説明し、大広間に朝食を食べに行った。すると、ロンとハーマイオニーの二人に出くわした。
「おはようハーマイオニー、ロン。ずいぶん朝早く起きたのね」
「おはようラヴィニア!ハリーがクィディッチの早朝練習に行ったらしいから、朝食を食べれないだろうと思ってね。今から持っていくところなの」
ロンは寝ぼけ顔で立っており、ハーマイオニーが朝食を持っていた。ハリーはクィディッチチームのシーカーである。ルームメイトのロンは一緒に起こされてしまったのだろうと、容易く想像できる。
「ラヴィニア、ハーマイオニーみたいに競技場に朝食を持っていきましょうよ。アリシアとアンジェリーナが、置き手紙に書いてあったでしょ」
「そうね!ハーマイオニー、ロン、またあとで会いましょう」
ハーマイオニーのいうことに、マルティナは賛成のようで、マーガレットたちもアリシアとアンジェリーナのため、大広間の朝食をいただくことにした。
競技場につくと、朝日がやっと照らしてくれる具合に明るくなっていた。
「朝の新鮮な空気っていいわねー」
「ほんと、たまにはこうして外で食べるのもいいわね」
マルティナとマーガレットは、競技場に向かう道をのんびりと食べ歩きしていた。二人以外歩くものは居ないため、注意されることもなかった。たくさんのクロワッサンやトーストをかごに入れてきたので、アリシアとアンジェリーナも気兼ねなく練習できるだろう。
そう思って競技場につくと、赤いグリフィンドールのユニフォームの団体の他に、緑色のユニフォームのも見えた。スリザリンチームだ。何かを言い争っているらしい。
「マッジ、なんでスリザリンチームもいるのかしら?」
「……わからないわ、近くにいってみましょう」
「あ、ラヴィニア、マルティナ!ここよ!」
「アンジェリーナ!いったい何が起こっているの?」
アリシアとアンジェリーナを見つけたので、事情を聞いてみたところ。先にグリフィンドールが競技場を使用すると予約していた。だが、スリザリンの寮監が予約を確かめることもなく、競技場使用許可を出してしまい、言い争いをしているようだ。
どうみてもスリザリンが悪いのではないのかと、マーガレットはスリザリンを見やった。なんとも憎たらしい顔をした選手が、ヘラヘラと笑っているだけであった。
そして、ハリー、ロン、ハーマイオニーが前に出てマルフォイに向かっていった。正義感の強い彼らだ。何を言うのかと二人は見やった。
「ウィーズリー、僕はスリザリンの新しいシーカーだ。僕の父上がチーム全員に買い与えた箒を、みんなで称賛していたところだよ。いいだろう?」
マルフォイが自慢気にニンバス2001を見せびらかす。皆は驚きの目でそれを見た。ロンは口をあんぐりと開けてしまった。それを見ていい気になったマルフォイは更に言う。
「グリフィンドールチームも資金集めして新しい箒を買えばいい。クリーンスイープ5号を慈善事業の競売にかければ、博物館が買いを入れるだろうよ」
スリザリンチームは大爆笑し始めた。マルティナは、マルフォイを汚物でもみるかのように睨み付けていた。自分の事を言われたわけではないが、奴に仲間を侮辱されるのがたまらなく嫌だった。
「少なくとも、グリフィンドールの選手は、だれ一人お金で選ばれたりはしていないわ。純粋に才能で選手になったのよ」
ハーマイオニーがきっぱりと言った。マルフォイの自慢顔はそれを聞いて歪んだ。
「誰もおまえの意見なんか求めてない。生まれそこないの『穢れた血』め」
マルフォイが吐き捨てるように言い返した。
途端にグリフィンドールのものたちが騒ぎ始めた。
フレッドとジョージがマルフォイに飛びかかろうとした上に、マルティナが「最低な男だわ!もう我慢できない!」と、殴りかかろうとした。それを食い止めるためにスリザリンチームキャプテンのフリントが、急いでマルフォイの前に立ちはだかった。マーガレットは内心『穢れた血』という言葉にショックを受けながらも、アンジェリーナと共にマルティナを押さえつけた。アリシアは「よくもそんなことを!」と金切り声を上げた。
すると、ロンが「マルフォイ、思い知れ!」と叫んで杖を突きつけた。
バーン!
赤い閃光が杖先ではなく反対側から飛び出してロンの胸元に当たった。彼はよろめき芝生の上に尻餅をついた。
暴れていたグリフィンドールの生徒たちがロンの方を一斉に向いた。
「ロン!ロン!大丈夫?」
ハーマイオニーが駆け寄った。すると、ロンがうえっと何かを吐き出した。白いナメクジが数匹彼の口から飛び出した。
これに、スリザリンチームは笑い転げた。グリフィンドールチームの面々は、引きつった顔をして彼のそばに寄り、見ているだけであった。マーガレットとマルティナも右に同じく立ち尽くしていた。ハリーとハーマイオニーがハグリッドの元へ行こうと言い、ナメクジを吐き続けるロンを抱えていった。
途中、グリフィンドールの一年生らしき小さい少年がハリーに付きまとっていたが、ハリーに一喝されその場にとどまっているのが見えた。
「ねえ、寮に戻っていいかしら」
「賛成。練習する気失せたわ」
「シーカーいないしね」
「……あのナメクジどうするの?」
「ウッドがどうにかしてくれるでしょう」
上からマルティナ、アンジェリーナ、一学年下のケイティ、マーガレット、アリシアである。それぞれここに居るのがいたたまれなかった。皆はそれぞれアイコンタクトして、立ち尽くす男性陣を置いて寮に戻っていった。
ちなみにスリザリンチームは未だに笑い転げていた。マルティナが帰り際に、地面に四つん這いになって笑っているマルフォイの足を踏みつけたことは彼女しか知らない。