ボーダー最強の部隊、と呼ばれているチームがある。それはわたしの友人である烏丸京介と、随一の親友で同期の小南桐絵、あとめちゃくちゃ料理の上手い万能手──通常万能手は攻撃手と射手、銃手が出来る者を指すが、彼は狙撃手も出来るため、完全万能手(パーフェクトオールラウンダー)と呼ばれている──木崎レイジ、元風間隊オペレーターの宇佐美栞が所属する、玉狛第一のことだ。「京ちゃんの様子を見るために南西部に行く」ことにしたのに、ここに京ちゃんが到着していないのは、ボーダーに提携していないお嬢様校に桐絵が通っているからだ。玉狛第一の戦い方は、基本的に攻撃手の桐絵が暴れて、他の二人がそれを援護するかたちの攻撃手主体。桐絵が居なければ火力は落ちる。だから桐絵を迎えに行って遅くなった、そんなところだろうか。
今のところ見えるラービットは二体。千佳ちゃんがもう一発放ったアイビスは、学習機能がついているのか避け られてしまったが……。三雲が相手をしているラービットの上から、飛んだラービットがひとつ。逆方向から、走ってくるラーヒットがひとつ。レーダーに見えるトリオン反応を見て、息を一つ吐く。
「……遅いよ」
走ってきたラービットを羽月で断ち切りながらそうぼやく。千佳ちゃんが撃てなかった新型の前には木崎レイジさんの姿。レイジさんが拳で放り投げた飛行するタイプは三雲が相手をしているラービットにぶつかって倒れ込み、その上からは桐絵がメテオラを放ちながら双月で切り込んでいた。相変わらずの早業。右から、「遅くなって悪かったな」と言う京ちゃんの声が聞こえた。煙が晴れかけた途端のビームを、京ちゃんが出したエスクードで受け止める。
「地面から、盾が……!」
「遅くなったな、修」
「ちょっと京ちゃん、わたしにも! わたしにも! 言って!」
「お前にはさっき言っただろ」
「相変わらず強いわね、羽純。今度また玉狛に遊びに来なさいよ」
「晩飯でも食べていくといい」
「わあ、歓迎されちゃった。桐絵も相変わらず強いね〜? あとレイジさんのご飯めちゃくちゃ食べたいです。今度行きます」
後ろで三雲が置いてけぼりになっているのを横目に談笑をしつつ、煙の晴れた先にまだ動いているラービットを見つける。桐絵の高火力でも、一発はやっぱり無理らしい。
「桐絵の最大を二発以上撃っても壊れないシロモノ……らしいよ。うちのちーくんによると」
正隊員のやられた一人、っていうのは多分諏訪さんだな。あの人、わたしの大事な羽由ちゃんの手を取っておいて、心配まで掛けるの?って今でも思ってる。うちのちーくんは優秀なのでわたしは心配してないけど。
「手加減しなくても大丈夫ってことね」
「桐絵の手加減なしの威力は怖いなあ」
「あんた人のこと言えないでしょ」
「修。木虎たちは俺たちが助ける。お前はC級をフォローしろ」
「まあ、新型さえ倒せばあとは雑魚だし……」
「これが終わればただの雑魚掃除だし、いけるわよね」
余裕ぶった、というよりも、普通に余裕なわたしたちが繰り広げている会話の最中、三雲は焦ったように言う。
「待ってください、まだゲートを開くやつが……!」
刹那。近くの場所に黒い門が開き、人型の近界民が出てきてしまった。白の角の近界民と、なんだか強キャラ臭のするおじいちゃんだ。
「いやはや。子供を攫うのは、いささか気が重いですな」
「これが我々の任務です、ヴィザ翁」
……おじいちゃんの方はいい人っぽそうだ。出来れば敵という立場ではなく、孫として出会いたかったものだ。―――世迷言か。