『兄さん達が人型を退けかけたけど、ワープ使いの女と一緒に逃げたって』
「うーん……流石だね、こうくんたち。わたしも頑張らなきゃな」
『七々原は今日は頑張りすぎだ。ちょっとは休め阿呆』
「酷いな、ちーくん……」
京ちゃんの家がある方角の少し前で、轟音と煙が見え、聞こえる。桐絵だって、可愛い後輩のおうちは守りたいんだろう。その気持ちは分かる。
けれどこちらで問題が起きては、いけないと思うんだ。本部に繋がる通路のドアを開けるために走ったのに、そのドアが開かないとは。
「宇佐美先輩、これ なんで開かないんですか」
『うーん……それが、本部と通信繋がんないんだよね……。通信室に何かあったのか、さっきのイルガー特攻でどっか壊れたのかな……』
「烏丸先輩、羽純さん、どうしますか」
「ここが無理なら、別の連絡通路を探そうか」
「それか、直接本部に向かうしかないな」
面倒なことになったものだ。もしかしたら、蒼也さんが仕留め損ねた黒の角付きが本部に行った? 旬とちーくんのことだから戦闘面で心配はしていないけど、彼らが自分のことを責めないといいな。
ふと、千佳ちゃんが走ってきた方向に目を向ける。
「! 追いかけてくる、二人……凄い速さで……!」
そういえば、彼女のSEは敵が接近してくることが分かるものだったはずだ。……それにしても、レイジさんが緊急脱出したのは今さっきだと連絡が入ったのに。随分早くやってきたものだ。
「ちょーっと、早いかなあ……」
そう零したわたしの肩に置かれる手。こんなの、見なくたって誰のものか分かる。
「大丈夫だ」
「京ちゃん……。もしかしてわたしが緊張してると思ってる?」
「? 思ってる」
「ほんと京ちゃんって馬鹿! ……緊張はしてないよ。この羽純サマにお任せだって」
「……そうか。無理はするなよ」
それにしてもこの同級生、いい奴である。わたしは溜息を吐いた。何故なら―――
「ほほう、追いついた。流石最新鋭のトリガーですな」
「恐縮です」
人型が二体、こちらに回ってきたからである。
「わたしがちょっとの間足止めするから、京ちゃんと三雲は迅くんから言われた合流地点に、」
その瞬間、どがしゃん、と大きな音を立てて、何かが民家の壁にぶつかった。ちょっと見えたけど、トリオン体だから良いとはいえ、彼、あんな登場の仕方で納得してるの?
「いってててて……」
青いジャケットに変な髪型、頭のゴーグル。
「迅くん……」
皆さんご存知、実力派エリートの迅悠一くんが、わたしの見せ場を奪ったわけである。
「初めまして、アフトクラトルの皆さん。俺は実力派エリート、迅悠一! 悪いがこっからは、俺が相手させてもらう」
そしてもう一人、上から飛び降りてきた黒トリガー使い。白髪の少年。
「空閑……! 迅くんと一緒に居たのか!」
「おっと間違えた。俺が、じゃなくて……俺達が、だ」
つまり。この人型二人を迅くんと空閑に任せて、わたしと京ちゃんは三雲とC級たちを誘導するのが、迅くんにとって、いい未来に繋げる一番の方法ってわけ。
「ほんと、ずるいなあ、迅くんは」
「ごめんな、羽純の出番奪っちゃってさ」
「許す。……あとでぼんち揚二箱」
「りょーかい」
仕方ないから、わたしはいつも通り、迅くんに付き合うことにする。