「嵐山隊、現着した!」
建物の上に立つ准くん、藍ちゃん、とっきー。佐鳥は今頃位置に付いているだろう。……というか、嵐山隊は三人(+一人)で登場してるのめちゃくちゃ狡くない?これだったらわたしも、わたしだけじゃなくて、旬とか連れてきたかったんだけど。
(まあ、本部とのいざこざには巻き込めないか……)
「それと、特別ゲストだ。出てきていいぞ」
やっとのことで、迅くんから合図が出る。蒼也さんは「まさか、」と呟いて、やっぱりあの人は頭いいよな、と考えつつ、わたしは前へと飛んで、迅くんの隣に並んだ。
「皆さんご機嫌麗しゅう〜。本部所属A級隊員、七々原羽純。一身上の都合によりこちら側で戦うことになりました」
ふらり、と一瞬揺らいで、羽月を手に持つ。所々からの驚愕の声を聞いて、ゆるりと口角を上げた。
「お前……」
「なあに、出水?」
その中でも特にわたしを凝視しているのは、わたしが倒したくて倒したくてしょうがない、憎くて止まない、わたしの弟子。太刀川隊射手、出水公平である。
「やっぱり愛しい師匠と戦う気は起きないかな、可愛いお弟子さん。降参してくれても良いんだよ?」
「……は、冗談。お前に負ける気なんてねーよ」
猫目がちな目を釣り上げてそう言う出水を鼻で笑う。よく言ったものだ。最近のわたしの勝率は100%なのは、相手をすることが多い出水が1番よく知っているはずなのに。深い青を纏った蒼也さんが言う。
「何故そちら側に付く、羽純」
「……それ、答える必要あるかな、蒼也さん?」
秀次先輩は、ぎり、と唇を噛んだ。ああ、あんなに強い力で噛んだら、血が出てしまう。トリオン体ならば関係のないことを思うのは、空閑先生のことを考えた所為なのか、どうなのか。
「面白い。お前の予知を覆したくなった!」
「……やれやれ、そう言うだろうと思ったよ」
お兄さんが弧月を抜く。星のように瞬くトリオンを刃とするそのトリガーはわたしも使っているけれど、やっぱり弧月と言えばはーちゃんとか、お兄さんとかだろう。羽月の輝きが、増す。
「羽月、アステロイド」
こちらに向かい走ってくる蒼也さん達をアステロイドで威嚇して、准くんたちの方も、銃を撃ちながら後退していく。お兄さんや歌川くんは迅くんにどうにか傷を付けようと迅くんに向かっていて。
「お前は来ないんだな、羽純」
「残念だけど、今日頼まれてるのは別のことなんだ」
そう言ってわたしは肩を竦める。実際、お兄さんが遠征に行ってからはあまり模擬戦をしていなかった。戦闘狂というわけではないが、物足りなかったのも事実だ。弧月をオプションで強化して、お兄さんは一帯の建物を薙ぎ倒す。上がった砂煙に身を隠すように、わたしはメテオラを放った(今の煙に乗じて、もう少し衝撃を与え、けむりを大きくするつもりだった)。
「ひゃあ〜……お兄さんこわいな……」
「羽純、集中」
「はーい、とっきー」
上空を飛ぶわたしたち。主にわたしの緊張感だけが著しく欠けていた。だって勝てばいいんでしょ。そんな感じでちょっと軽い。勝って、奪わせなきゃいいんだ。
「次はこっちを分断しに来そうだな」
「その場合はどうする?」
迅くんと准くんが会話する。やはり似ているな、と思いながら横顔を眺めた。
「別に問題ないよ。何人か嵐山たちに担当して貰うだけでも、かなり楽になる。……風間さんがそっちに行ってくれると嬉しいんだけど――」
「ま、蒼也さんは迅くんのとこだろうねー。で?わたしはどっちに行けばいいの?」
「羽純は嵐山たちと一緒に頼む」
「りょーかい」
「うちの隊を足留めする役なら、多分三輪隊ですね。羽純までこっちとは思ってないでしょうけど……。あっちには三輪先輩の
「どうせなら、分断されたように見せながら、こっちの陣に誘い込んだ方が良くないですか?」
「そうだな。賢と連携して迎え撃とう!」
……お兄さんのことだから、出水をこちらに寄越すだろうし、さっき米屋先輩が居なかったから、米屋先輩も来るかもしれない。特に出水の、
「頼んだぞ、羽純」
「頼まれました」
それでも。空閑先生を。父たる黒トリガーを、奪わせる訳にはいかないので。