性癖に忠実なSS


強めのお酒だったのか花奈さんはすぐに酔っ払い、ぎゅっと俺の腕に絡みつく。
「……なんか熱くないか?えと……俺が冷やしてやるよ。」
 もちろんそれは、甘えるためのわかりやすい口実だ。
 花奈さんは長めの靴下を脱ぎ つま先にかけて少しずつ透けている左足を出した。
 が、 少し震えた声で「やっぱやめるか」と呟いた後、靴下を履き直して俺に抱きつくのだった。
「……まだ、怖いの?」
 そっと俺は花奈さんの頭を撫でる。
「まぁな……気を抜くと浮いてるのに、自覚も一応あるのに、自分の素足を見るのはまだ慣れないんだ。
俺がこの身体で、一番嫌な部分。
透けてる素足を見るとさ、いつ消えてもおかしくないって実感させられるようで、涼とお酒を飲んだり、一緒に出かけたり出来なくなるのが怖くて。
────俺って……死ぬのが怖いのかな?もう死んでるのにさ。」
 俺は珍しく弱気な花奈さんの小さな背中をそっと擦りながら、もう片方の腕でぎゅっと抱きしめたのだった。

 つらいことも、どうか今だけは、甘いお酒で忘れてしまえばいいのに。

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