無題16

「れいはぁ……ひっく。」
 顔と耳を真っ赤に染めた、お酒くさい彼女はふらふらしつつも、デレデレと甘えてきた。
「れいはしゅきしゅき~」
 呂律の回らないふにゃふにゃした喋りで、すりすりと頬を寄せてくる。
 相当酔っているなと思いつつ、甘えん坊な彼女は珍しくて、愛おしかった。

「…………なぁ、れいは。」
「どうしました?」
 ちゅっ
「…………れいはは、おれのことどれくらいすき?」
 彼女はワインをグラスに注いで私に渡す。
「むりにとはいわないけろ…………**のんれ。」
「はいはい、酔うまで何杯飲ませる気ですか?」
「……まほーをかけたから、いっぱいれ かなりよう……ぜ?」
 かわいい彼女のお願いには勝てずに、私はワインを喉に流し込んだ。

「……れいは?」
 黎羽は顔を赤くしてオレを優しく抱きしめる。
「つるみひゃん……ひっく」
 なんとか立てそうだが、予想以上にかなり酔っているようで呂律が全然回っていない。
「なぁ、れいは。」
「ろぉひまひたかぁ……?」
「……おれと、えっちしよ。」
 黎羽は少し悩んだ後にオレを寝かせて子守唄を歌った。

「……まだねむくないもん。」
 本当は少し微睡み始めたが、酔ってる黎羽をもう少し見たくて仕方がない。
「よいこはもうねるじかんれすよ~?」
 黎羽の体温があたたかい、ねむい。
「れいはぁ……。」
 オレがきゅっと抱きつくと、黎羽は優しく、ぎゅっと抱きしめた。
 だめだ、酔ってるせいであたたかくなってて、完全に眠……

 彼女は幸せそうに、甘えたまま寝てしまった。
 そうだ、どのくらい好きか言ってなかったなぁ。
 でも、こんなに酔ってたら彼女の記憶も吹き飛んでいそうだから、明日、酔いが醒めてたらちゃんと答えを言おう。
 それにしても、かなり酔っているらしく、下手してたら一夜を明かす所だった。
 彼女のあたたかさでこっちまで眠くなってしまったようで、今日はソファで眠ることにする。

「……黎羽、おはよ…………え!?」
 黎羽までここで寝てるって大丈夫か!?
 激しい頭痛をなんとか堪え、ぼんやりした記憶を遡ろうとするが何も思い出せない。
 黎羽は二日酔いのオレを抱きしめて優しく頭を撫でた。
 頭を撫でられるのは好きではないが、黎羽に撫でられる事に関しては本当は嫌いではなかったりする。
 でも、いつものようにオレは黎羽の手をどけた。
「おはようございます、世界一……いや、宇宙一大好きなつぐみちゃん。」
「ななな、なんだよいきなり!
昨日なんか変な事したのか!?
お前まで酔うなんて……。」
「……酔ってみるのも、案外悪くないですね。
幸せな時間でしたよ。」
 だから何があったんだ?
 オレは高鳴る鼓動を抑えきれなくて、黎羽に甘える。
「オレも、黎羽が好き……。」
「えぇ、私もつぐみちゃんが好きですよ。」
 二人は距離を縮めて、そっと唇を重ねた。

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