無題20

 くそ、完全に囲まれた。
 黒い悪霊は黎羽を狙っている。
「つぐみちゃん!2人で戦いましょう!!」
「……怪我だけは勘弁しろよ?」
「つぐみちゃんに治してもらうから大丈夫ですよ。」
 心配だな。
 でも黎羽を守りながらこいつらをまとめては……
「…………やっぱお前が戦うとなると気が気じゃねぇ!!
悪霊退散!『キーラ・ダエモン』!!」
 オレは悪霊にのみ効く封印魔法をかけて悪霊をひとつの塊にする。
「この十五夜月魅様が封印で済ますと思ったか!?
『インテルフィケレ』!!!!」
 それは誰にでも効く、禁じられた危険な滅亡魔法だが、範囲が定まっているから黎羽は無事だ。
 ドス黒い塊は跡形もなく消え去り、気付いたら黎明を告げる鐘が鳴っていた。
「ふふ、朝日が綺麗ですね。」
「…………黎羽みたいだな。」
 ふと、そんなことを呟き口を抑える。
「照れますねぇ、そんなこと言われたら。
昨夜の満月もつぐみちゃんみたいに綺麗でしたよ?」

 黎羽はいつも通りの笑顔でオレを抱きしめた。
 ……そっちの方が照れるだろ。

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