無題5

「…………れいはぁ」
 千鳥足の彼女は呂律が回らずぽわんとした喋りで私の名を呼ぶ。
「どうしましたか?」
「やっぱおんぶがいい…………。」
「はいはい」
「なれなれすりゅなぁ……っ。」
 彼女は頭を撫でられるのが苦手なのだが、シラフと泥酔した時のギャップが可愛らしく、少し嬉しそうなのもあってかつい手が出てしまうのだった。
「すいません、酔っ払ったつぐみちゃんがあまりにもかわいいので、ついなでなでやぎゅーをしたくなるんです……。」
「おれが、か?」
 彼女は少し首を傾げる。
「はい、普段のかっこいいつぐみちゃんと違ってぽわんとしてて、本当は甘えたいのに甘えるのが恥ずかしいのもかわいいです。」
 彼女は少しずつ赤い顔が赤くなる。
「ろこれそれいった!?」
「どこでって……昨日の事ですよ?
精神魔法の副作用と合わさって忘れてしまったんですかね。
『もっと黎羽に甘えたい』とか照れながら言っててかわいかったです。」
 そういう話を続けるとそろそろ限界なのか彼女は背伸びしてキスをした。
「……むかしのおれより、いまのおれをみてよ。」
 そういう彼女は涙目だった、かわいい。

- 5 -
前の話目次次の話

コメント 0件

コメントを書く