最近万事屋に増えた居候――荒月真。毎日毎日、東京の小学校に通っている一年生。最初の頃、よくもまあそんな面倒なことを、と言ったことがあるが、本人は「楽しいから問題ない」と笑っていた。
学校でできたという友達と出かけては事件に巻き込まれて帰ってくる。最初のうちは神楽も新八も心配していたが、今ではすっかり慣れてしまって、もはや日常茶飯事だ。
共犯者に選ばれて早数週間。正直俺の生活はあまり変わっていない。真は居候とはいえ休日も友達と出かけることが多いし、放課後もその友達と遊んで帰ってくるので、世話してやっているのは寝床くらいのものだ。
それでも稀に、真の保護者として政府方の警察に呼び出されることがある。なんだって俺が、と思わなくもないが、共犯者なので仕方がない。お詫びだと言って帰りに喫茶店に寄り、パフェを奢るあたりコイツも真面目だなと思う。もちろん遠慮なくいただくが。小学生に奢られる大人ということで真の友達に白い目で見られるが関係ない。何せ、万事屋で一番金を持っているのは真なのである。万年金欠を舐めんな。
その日も真の奢りで、真の友達――コナンの家の近くらしい喫茶店に寄った。「ここの上の階が、ボクがお世話になってる小五郎のおじさんの事務所だよ」なんて言うコナンに案内されて入店する。コナンと仲が良さそうな金髪褐色の店員を横目にメニューを眺めていると、その店員が真に「ちょっといいかな」と声をかけた。
「はじめまして、だよね。君が少年探偵団に新しく入ったっていう、荒月真さんかな」
「うん、はじめまして。こっちは保護者のチャランポラン」
「オイ」
「まあ、小学生にタカってるから間違いじゃないよね」
「コナンくんまで酷くない? 銀さんは真の気持ちを尊重してるんですゥ」
「銀さん、ですか」
良かったらこれ、と真が金髪店員に俺の名刺を差し出す。いつの間にスったんだよオイ。
「坂田銀時……へえ、江戸で万事屋を。僕は安室透といいます。よろしければこちら」
「……ふうん、探偵ね。少年探偵団といいコナンとこのオッサンといい、東京は探偵がブームなんですか? 俺も万事屋畳んで探偵事務所にしようかなァ」
「銀さんはすぐ警察と喧嘩するからムリ」
「あァ!? 吹っ掛けてくるのはあの税金ドロボーどもだろうが!」
差し出された名刺を見て浮かんだ案を即却下しやがった真の髪をかき回していると、安室の視線がスゥと冷えた。
「税金泥棒、ですか」
「税金ドロボーで十分だろ。ゴリラにマヨラー、挙句サディスティック星の王子だぜ? それに比べて政府方の警察の皆さんの素晴らしいこと! アイツらもちったァ見習えっての」
「喧嘩するほど仲が良いを地で行く人なので気にしないでください」
「ハハハ……」
だァれがアイツらと仲良くなんかするかっての! コナンも苦笑いしてんじゃねェよ。ていうか安室サンは仕事しなくていいんですかァ?
「ところで……先日、真選組の御用改めの現場に遭遇しましてね」
「あァ? 怪我したくなきゃあのチンピラ警察24時には近づかねェ方がいいぜ兄ちゃん」
「初めてのことだったものでつい見学してしまいました」
「聞けよ」
なんだこの探偵。というか見た感じ無傷そうだがよく無事だったな。どうせ総一郎くんがバズーカぶっ放してビビったとかそんな話だろ。江戸じゃ割と日常茶飯事だからな、それ。
「土方十六夜という方をご存知ですか?」
一瞬、思わず息を止めてしまう。
「……土方ぁ? マヨラーの兄弟かなんかか? 俺が知るわけねェだろ」
「ええ、正しく土方副長のご兄弟のようです。彼のことを“兄上”と呼んでいました。ですが何やらワケアリのようで……江戸の万事屋さんなら何か知ってるかも、と思いまして」
「それは調査の依頼か? その手のことは探偵の得意分野だろ」
知らねェよ、と手を振れば安室はそうですかと大人しく引き下がった。何だってんだ、何かやらかしたのか? 面倒事はごめん被る。
「帰るぞ真」
「え?」
「すみません、気分を害してしまいましたか?」
「メニューにイチゴパフェがねェ」
「はァ……またな、コナン」
「あ、ああ……」
真の手を引いて店を出た。せっかく案内してもらったのに、コナンには悪ィことしたかもな。今度イチゴミルクでも買ってやるか。
「銀さん」
「どうせあの夜だろ。血生臭かったもんな」
ったく、世話の焼ける共犯者だこと。