はいはい先生、うるさいです
ひらり、膝より少し上のスカートが腿を撫でる。なんだか擽ったくて、軽く身を捩ればひらりと揺れる裾。
胸で踊る赤いリボンを見下ろせば、ほんの少しだけ懐かしい気持ちになるけれど、私は、今、何故、セーラー服を?
「え。で、なんで?」
「え?せやから、コスプレやって」
「着ろ」と言わんばかりに手渡された何かが綺麗に包まれた不透明な袋。一体何が入っているんだ、コネシマはいつだって言葉が足りない。
渡された袋を何とか手で開けきれば、紺色の長袖セーラーに真っ赤なリボン。まさか、なんてちらりとコネシマの方を伺えば、顎で催促されてしまい抵抗虚しくあれよあれよと着ることになってしまって、今だ。
「ほーん、まだいけるな」
「個人的にね、もうこの丈はキツいと思うんだけど。年齢的に。」
膝上二十センチ程度、普段履かない丈のスカートにかなりの恥ずかしさとキツさを感じる。家の中とはいえ全く落ち着かない。
今の私は制服コスプレ異常成人女性だ。
「高校生でまだ通……らんか」
「通らんのかい」
「いや、ギリギリ……?微妙やな」
そう言ってケラケラと笑ったコネシマ。いや、うるさ。
高校時代からそれほど体型は変わってないとはいえ、別にそれほど童顔でもない。そして高校生時代なんてものは数年も前の話だ。
つまり、ほんとに大人が制服を着ている変な状態。
「ね、もう脱いでいい?」
「いや、もうちょい待って」
舐めるように上から下へと眺められ、ほんの少し……いや結構、かなり、めちゃくちゃ不愉快でもある。因みに高校時代はニーハイだったこともあり、その時と同じくニーハイを履いている。入っていたから仕方ない。
少しずれ下がった靴下を元に戻せば、コネシマは「ふんふん」なんて何かに納得したような声を出す。
「着替えてく、」
「ちょい来いや」
「うへ、」
ぐいっと手を引っ張られ、ある程度とっていたはずの距離はほぼゼロ距離で。
「なに?」なんて口を開こうとした瞬間、奴がにたりと笑う顔が見えてゾワッと嫌な予感。これは、遅かった。
「いやだ!」
「まだなんも言うてへんがな」
「察した。いや、絶対無理だから」
ベッドの端に座ったコネシマの手は当たり前のようにスカートの中へと滑り込み、するりと太ももを這う。
ぶんぶんと首を振っても、一向にやめる気配はない。
「ひ、百歩譲って!その、……するのはいい、けど……流石にこの格好でしたくない!いや、何も良くない!」
「そのために買ってきたのに。というか、別にすぐ脱ぐし変わらへんやん」
いや全然変わるから!なんて心の叫びはもちろんコイツに届かない。腰を引き寄せられ、コネシマの膝の上を跨った状態に。やだよー!コネシマのバカー!
「……なに」
「いや、別に」
短いスカートのお尻を押さえ下着を見えないようにガード。
少し後ろに反れば、なんだかお腹が出てしまいそうで、そっちを隠したら次は背中がガラ空きで悪循環。ギィ、腹が立つ。
「そそるな」
「訳わかんないし……というかこれ、どこで買ったの?」
「ネット」
なるほど、だからなんか、こんなチープな……なんて思えば、いきなりやんわりとセーラー服の上から胸を揉まれ驚いてビクリと身を強ばらせる。
そのまま降りてきた手は服の中へと侵入しようと脇腹をなぞる。マズい……なんてお腹を隠した瞬間、隙をついたように背中から入ってくるゴツゴツとした手。
「ひっ、」
「そんな悲鳴あげんでもええやん」
ケラケラと笑いながらブラのホックに手をかけて、いとも容易くぱちりと片手で外してしまう。
胸周りを締め付けていたものがなくなり楽になるけど、今はそれが恨めしい。
「や、やめません?」
「やめへん」
諦めたようにガックリ項垂れれば、楽しそうにふんふんと鼻歌を歌いながら前に手を戻したコネシマ。ブラの下に手を入れやわやわと包むように揉まれる。
「っ、」
「……片手で収まるサイズ」
「うるさい、あんたを殺して私は生きる」
「いやお前は生き残るんかよ」
ほんの少しだけ高揚していた気持ちも、この心無い言葉によってすぐに下がる。ほんとにやめて欲しいという気持ちを込めて、頭にチョップをお見舞い。凹まないかな、頭のてっぺん。
「いてっ!お前なぁ……」
「は〜?そこまで強く叩いてないし」
尚も動くことを止めないこの男の手はどうなっているのだ。私が口元に手を当て、吐息が漏れるのを抑える姿を見てコネシマは大満足な様子で。
「も、ばか……っ、!」
「知らんわ」
じぃ、と音を立て上げられるセーラー服のファスナー。そこから手を差し込みブラを押し上げる。
裏地が先端を掠め変な気分になる、ダメだ。
「涼香」
「な、なに」
「ええやろ?」
ここまで勝手にしておいて、結局最後はそうやって訊いてくるのかこいつは。
悔しいけれど、こちらも若干、ほんのちょっとだけそんな気になってしまった。こくりと小さく頷けば「ん」なんて小さな返事。
最早イメクラじゃん、なんて思うけれど本番ありだし……とか、どうでもいいことが頭の中をよぎり小さく頭を振ってそれを消す。
「こっち向いて」
「や、」
「なんや、先生の言うこと聞けへんのか?」
ぷい、と顔を背ければ楽しそうな声音でそう言ったコネシマ。え、なにこれ。そういうシチュエーションでやるの?
「先生……?」
「そう、俺が先生」
「……無いわ」
こいつが先生とか終わってんな。なんて少し失礼か。
また名前を呼ばれ、次こそ向いてあげればいい笑顔で「いい子」なんて頭を撫でてくれるもんだから、こちらとしてはたまったもんじゃない。
「顔がいいの、ほんとずるいって……」
「そーか」
言うこと聞いて、この顔に褒められるんなら……まあ、良いかも。なんて気持ちと、絶対にこいつの思い通りになりたくない、嫌だ!なんて頑固な気持ち。
どうすればいいんだ。わーん。こころがふたつある。
「しゃあないなぁ……好きなだけ褒めたるがな」
「……ほんとに?……顔は絶対に見せてね」
「分かった分かった」
顔に釣られてついつい了承してしまう。コネシマの顔に弱い自分、何とかならないだろうか。
期待の篭った目でこちらを見つめられて、そんな約束をしたならば。それに応えなければならない訳で。
「……マジで?」
「マジで」
「ひぇー……。えぇ……待って、え……と、せ……せんせい?」
「なんで疑問形やねん」
そう言っていつもみたいにおおきなこえで笑いながら私の髪を撫でる。
「まあ、ええわ。その調子でしっかりやれよ」
「はぁい」
あ、今の先生と生徒っぽかったかも。先生、完全に舐められてますけど。なんてぼんやりと心の隅で思えば、小さな音を立て目尻あたりに軽くキスされる。
珍しくコネシマが優しく接してきて嫌に怖い。……こいつ、なんかやらかした?まさかなあ……なんて薄ぼんやりと考えていれば、また胸に伸びた手。耐えるように、薄らと目を閉じる。
「ん、…ふ、ぅ……」
「リボン、外すわ」
しゅるり、リボンは解かれてベットの上に落ちる。真っ白なシーツの上に流れる赤いリボン。前のボタンは丁寧に外されて、セーラー服……もうほぼ着ている意味無いし、脱いだ方がいいのでは?
「……これ、脱ぐ……?」
「いや、着たまんまでええで」
この言葉から推測するに多分、着衣になるのでは。まあ、もうこうなったらなんでもいいか。汚しちゃっても知らない。コネシマが洗ってね。
「ねえ、先生」
「ん?」
「……その。制服、似合ってる?」
「おう。よう似合っとるで」
普段言われない言葉を使われちゃ、こそばゆくて仕方ない。数秒、見つめ合って珍しく甘い時間。ああ、なんだかこそばゆくて恥ずかしい。
「ほな、次の授業は保健体育やな」
「……最悪、昭和のおじさんなの?」
ド オ ン
!?
上弦の…参?
どうして今ここに……
小説を書こう、ぶちち
そうすれば100年でも200年でもぶちの小説を読み続けられる、強くなれる
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