赤い花は君の色
この度、復職することになった。予定通り復帰することが出来て一安心。
ブランクもある。当分は内勤になるけれど、早く警らの方にも復帰できたらいいな、なんて。やっぱり、自分は白バイに乗っている方がらしい気がする。
意気揚々と自分のデスクに向かえば、デスクの上に置かれた小さな花束。ギョッと目を剥けば隣の席の先輩はギィと椅子を鳴らす。
「復帰おめでとう、因みにこれ。朝イチからあったよ」
「えぇ、誰からだろう……ここの人ですかね?」
「だったら直接渡すと思うけど……」
確かに、それはそう。
赤を基調とされた控えめな花束。色々確認したいけれど、それより今は溜まった書類をしなくちゃいけなくて。
椅子を引けばこれまたびっくり、紙袋の中にいっぱいのお菓子。
「……これもです?」
「それも」
椅子に座り紙袋の中をざっと見れば大好きだったお菓子がいっぱい。ホワイトチョコ系のお菓子に好きだったグミとか駄菓子とか。懐かしいものが沢山入っている。
最近は全然食べてなかったし嬉しいけれど、流石にパッケージに封がされていても差出人不明のものを口に入れるのは、ちょっと。
とりあえず、それも一旦脇に避けてさっさと業務を終わらせよう。
久しぶりの仕事、ほんとうにつかれた。最近全然頭を使っていなかったせいで、全体的に鈍っている気がする。
ああ、書類するならまだ訓練したい。外に出たいけど、今交通違反の取締りなんかしたら頭パンクするんじゃないか……?
……そろそろ帰るかあ。なんて立ち上がるとき、ちょうど足元に避けておいた花束と紙袋が目に入る。
あ、ちゃんと持って帰らなきゃな……なんて大事に抱えて家を目指す。多分、変なものは入っていないだろう。庁舎に置いていかれたものだし、流石に。……たぶん。
────────
「ただいま〜」
誰もいないのに、なんて。もう癖になってしまっているから仕方がないだろう。慣れないパンプスは脱ぎ捨て、真っ直ぐリビングを目指す。
ああ、なんかタバコ吸いたい……けど、一応禁煙中だし、でも一本だけなら……なんてモゾモゾと部屋を探すけど見つからない。仕方ない、諦めるか……。
そういえば、なんてその辺に置いていた花束を思い出す。そうだ、もしかしたら何か差出人が分かるものがあるかもしれないし、家へ帰ったら探そうと思ってたんだった。
……それにしても綺麗な生花だ。すんと匂えば、生花独特の甘い香りは嫌いではない。あれ、そういや花瓶あったっけ、買って帰るべきだったかな……。
まじまじと花束を見つめていれば、少し分かりにくいところに半分に折りたたまれた小さな紙。あ、もしかしたら差出人が書いてるかも……、なんて淡い期待を抱いてその紙を開く。
すると中には『おめでとう』そう一言だけ添えられているだけだった。
そこではたと動きをとめる。見覚えのある文字、走り書きだけど個人的には読みやすくて、何度も見たものだ。
紙袋の中身も、もう一度確認してみればそうだ、思い出した。どれもこれも警察学校時代辺りに好きだと言ったものばかり。
「ふ、ふふふ。もう……、お菓子なんて最近はあんまり食べてないよ。真梨ちゃんったら……」
このグミなんて、真梨ちゃんにおすすめしたらモニョモニョと噛んだあと「……顎、疲れた」とか言ってたやつだし。これは「よくそんな甘そうなの食べれるね……」なんて怪訝そうな顔で見られたりしたチョコのお菓子。ああ、もう。どれもこれも懐かしい。
……せっかく、せっかくなら顔くらい見せてくれたらいいのに。直接渡してくれた方が、もっと嬉しかったな。とか。
もう一度花束を手に取ってみる。これだって、私の好きと言った赤色だ。真梨ちゃん、どんな顔して花束選んでくれたのかな。ふふ、お花屋さんに真梨ちゃんってちょっと想像出来ないかも。
……会いたいな、真梨ちゃん。元気そうで良かった。生きていてくれて、良かった。今は何をしているのだろうか。確か、最後に会った時には警察庁に──とか言ってたっけ。
潰れないようにきゅうと花束を抱き締めれば、鼻を擽る甘い香り。
せっかくだし、頂いたお花はずっと大事にしよう。可愛い花瓶を買って、毎日お世話して長持ちさせて。どうせならドライフラワーにしたっていい。
なんてったって、大好きな親友から初めて貰ったお花だから。ずっと、ずっと大切にするつもりだ。
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