熱愛記事の正しい読み方
お昼休み、ぼんやりと眺めていたネットニュースに気になる記事。人気バレボール選手の熱愛か、下世話だなあなんて。なんとなくタップしてすいすいと画面をスクロールすれば、掲載された写真に見覚えのある顔があり、無意識のうちに眉根を寄せてしまう。
さっきまでは読み流していたけれど、最初からじっくりと記事を読めば本命彼女、熱愛、結婚秒読み。まあなんと面白い。知らんかった、侑って結婚秒読みなんや。
一応、この男と私は数年前から付き合ってたはずなんやけど。じぃっと添えられた写真を拡大して隅々まで見つめる。見間違いではないようで、宮侑選手と大きく書かれている。
綺麗な女の人を横に置いて、どうしてこんなにも興味なさげにスマホを眺める事ができるんだろうか。隣には明らかに私ではない髪の長さ、細さ。というか、お相手は現役モデルだって。
もし、この宮侑の本命彼女さん(仮)が誤情報やとするならば。デマのニュースを流されたことになるし、この記事が本当なら私は一体なんだったのかという話だ。
「ふ、ふふふ……」
ひとりきりの休憩室。思わず、笑顔。
侑ったら、どんな顔をして帰ってくるのか。今から楽しみでしかない。
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「たっ、ただいまぁ……」
「おかえり。ご飯できとるよ」
そう言ってなんでもないように、いつも通り出迎えれば侑は安心したように表情を緩ませながら荷物を置く。適当に盛り付けた料理を机の上に置いていると、窮屈なワイシャツからダル着へと着替えた侑はニコニコ笑顔でこちらへと向かってきている。
「今日のご飯なに?」
「見たらわかるやろ?あ、本命彼女とは最近どう?」
「ブッ」
ちょうどお茶を口に含んだ瞬間だったらしい。間一髪、ご飯にはかからへんかったけど汚い。
わなわなと震えている侑に目をやり、どうするか迷った後ににこりと笑ってやれば、何がどうなのか。ぶるりと震えたあと「ち、ちゃうねん」と続けた侑。
「ちゃうねん、ちゃうねんで?あの、聞いて?ちゃうんやって、あれはそういうんじゃなくて、あの」
「焦っとると余計怪しなるなぁ。まさか、侑の本命彼女はモデルさんで、私って。遊びやった?」
「んなっ!違っ!!ああ、もう!話、聞け!」
からかって遊んでただけなんやけど、本気で誤解しとると思ってんのか慌てた侑はがっしりと私の肩を掴みこちらを見据える。肩、痛いねんけど。
「あれは、デマ!フェイクニュース!勘違い!この前付き合いで飲みに行った時撮られてしまって、別にコイツとは何もない!」
「え、うん……知ってるけど」
「知ってんならええけ……なんで!?」
そもそも、写真を見たら何となく分かるだろう。この記事が本当だとしたら、なんで本命彼女にこんだけ素っ気ない態度なんだこいつは。もしかして、世間一般的な侑のイメージはこれで違和感とかないんか?
「何年もかけてプロポーズしてきて、付き合ってからも未だにベタベタしてくるやつに他の女おったら怖いやろ」
「りょうかちゃん……」
「まあ、別におってもええけど」
「涼香ちゃん!?」
ぺしんと肩に置かれた手を振り払い自分の定位置に座る。動揺している侑は立ち尽くしたまま、払われた行き場のない手を彷徨わせている。
「ご飯冷めんで」
「お、俺。絶対浮気とかせぇへんし、涼香ちゃんの事だけ好きやし、絶対裏切らんし、」
「はいはいもうわかったから、食べよ」
へにゃへにゃになってしまった表情を見て少しやり過ぎたかな、なんて反省。だって、からかったら可愛い反応するから。仕方ないやろ。
落ち込んだ顔でご飯を食べている侑に思わず口元が緩む。
嫉妬してないと言ったら、ちょっとは嘘になるけど。侑の事信じてるから落ち込んでないねんで……とかはまだ本人には言ってやらないつもりだ。
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