サンタさんからの贈りもの
「サンタ、いつまで信じてた?俺は〜」
ある日のことだった。クリスマスソングやクリスマス関連のものが街中には溢れ、もうそんな時期かぁなんて思っていた頃だった。
侑からのそんな何気ない一言で、自分がまだ小さかった頃を思い出す。中高の頃は、確か。好きなものを買いなさい、なんてお金を渡されていた気がして。小学生の頃は「お父さんとお母さんから」なんてその時欲しかったものとか、幼稚園の時は……あれ。私、サンタさんって、信じてたっけ……?
「……多分やけど、幼稚園の頃には“おらん”って知ってた。親からってプレゼント貰って……何?その顔」
「えっ、いや……そうなん?」
まさかの回答にびっくりしたのか、目をまんまるにしてこちらをじっと見ている侑。まあ、そういう方向性の家庭だって……あるやろ。知らんけど、うちはそう。
「サンタさんからプレゼント貰ったことない?」
「ないなあ。せやから、信じてる子の前で迂闊なこと言わんように気を付けてた気はする、かも。低学年の時とか」
「そんな歳から……」
そんな顔をされても、うちでは普通だったし……。それにプレゼントは貰っていたし、チキンやケーキだって食べていた。サンタさんの存在を信じていない以外、それなりに普通の家庭と何ひとつ変わらないクリスマスを過ごしていたはずだ。
「ふぅん……そうや、あのな──」
納得したようなしてないような、そんな顔の侑は思い出したように話題を変えた。あんたが聞いといて、なんて悪態はつかず、大人しく相槌を打ってやるのだった。
────────
「涼香!見てみ!プレゼントあるで!」
「ッチ、なん……?」
目覚ましが鳴る全然前の、まだ朝早い時間。どこかわざとらしさを感じる侑の声に眉を寄せながら、眠たい目を擦りつつ指さされた枕元を見遣る。
そこにはシンプルやけど、私でも知っているようなブランドの名前が書いてある紙袋。チラリと侑の方を見ればこれ、何?なんて口に出さなくても察したのか続ける。
「サンタさんからのプレゼントとちゃう?クリスマスやし!」
ニコニコそわそわ、侑の態度を見るに多分、きっと。彼が用意したものなんだろう。だけどそんなことを言うのも無粋か、なんて大きなあくびをしながらモゾモゾと起き上がり袋を手に取る。
「開けてええかな」
「涼香ちゃんのやと思うし、ええと思うよ」
「ふーん……」
袋に手を入れ、中から小さな箱を取り出す。綺麗にリボンが結ばれていて、少し解くのが勿体ない。じぃと眺めていれば、侑がずっとソワソワしとって気ぃ散るしこりゃはよ開けた方がええか。
リボンを解き、箱を開ければ中にはシンプルなゴールドのネックレス。
「俺のもネックレスや!ほら、見て!え、これお揃いやない?……ど、どしたん?えと……嬉しい、なかった……?」
「……ふ。ううん、嬉しい。なあ、これツムが着けて」
「……お、おん!」
クリスマスのプレゼントにペアのネックレスを用意するとか、そんな可愛いとこあるんや。なんて小さく笑いながら侑にネックレスを渡し背を向ける。
後ろ髪を上げ「ん」なんて急かす。首へと回されたネックレスはひんやりと少し冷たいけれど、留めるのに苦戦している侑のお陰ですっかり慣れてしまった。
「できた!」
「ありがとう」
鏡がある場所まで行くのが面倒で、スマホの内カメで確認する。胸元で揺れるネックレスに、こんな小芝居をしてまでプレゼントを用意してくれた侑の気持ちに。嬉しくてつい、少し口角が上がる。
「……サンタさんってほんまにおったんやな」
「な、俺もびっくりしたわ」
「……ふ、あはは!あーあ、サンタさんありがとう。サンタさんの事ちょっと好きになったわ」
「ふ、ふーん?」
箱を抱いてまたごろりと寝転がる。
お礼を言って「好きになった」なんて言えばどこか複雑そうな顔をした侑。あんたが始めたんやから、最後までちゃんと隠しなよ。なんてまた面白くなって口元が緩む。
「侑、ありがとう」
「お、俺ちゃうし……」
おもむろに起き上がり、傍で座っていた侑の首元で揺れるネックレスに指をさす。
突然のことに侑は驚いたのかビクリと揺れ、彼を見上げれば困ったように眉を下げ「な、なに?」なんて一言。
「お揃い、嬉しいなぁ」
「っ……嬉しい、です」
「あはは、サンタさんも粋なことするわ」
「ダァ〜ッ!もう!涼香ちゃんのアホ!」
元から、私が気付いていたのは知ってたやろうど。軽くからかってやれば我慢できなかったのか拗ねてしまった。そない拗ねても、可愛いだけなんやけど。
「ツム、『サンタさん』にありがとう大好きって言うといて?私、サンタさんから物貰うん始めてやから伝え方とかようわからんし」
「……分かった」
「お願いね。さて、ご飯作ってこよ」
そう言ってポン、と頭に手を置くと大人しくなった侑。
侑にはプレゼントを用意しているけれど、サンタさんにはお礼を用意してなかったから。今晩はケーキとチキンと、サンタさんの大好きなものでも作ってやろうかな。
仕事終わったら買い出しとか大変だな〜なんて、大きく伸びをした。
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