03
適当に相槌をしているとセドリック・ディゴリーと名乗った彼は楽しそうに学校や友達やクディッチについて話し続けている。楽しそうに話すもんだと私は思いながらも新鮮な話につい聞き入っていた。
「そういえば君の名は?」
「僕は、セス・ノーザンバランドだ。よろしく頼むよディゴリーくん。」
「え、……ノーザンバランド?」
あぁ、嫌な目を向けられた。お前があの?と言わんばかりの嫌な目だ。きっと親にでも私の家系のことを聞いているのだろう。
「あの、えっと…」
「次、ディゴリーさんこちらへどうぞ〜〜!」
彼は何か言おうとしていたけれどそれを言い終わる前に店員に声をかけられてディゴリーは店の奥へ歩いていった。
「まぁ、慣れているさ。」
「旦那、結構時間かかったな。」
「入学シーズンらしくてね。1つ学習したよ。さぁ、ガンショップへ行こう。僕もそろそろ護身用に1つ欲しい。」
そういって歩き出そうとすればベルナドットに肩を掴まれた。なんだとふりかえればバツの悪そうな顔であ〜〜と言葉を探している。
「それは俺から贈りたい。今日はやめて、早めに帰ろう。顔色があんまり良くないぞ。」
「そうか?お茶菓子も見て帰りたかったんだが……。やっぱり屋敷にこもりきりはよくないみたいだね。今日は諦めるとしよう。」
あとはつえだけ揃えて帰ろうとベルナドットに伝えて歩き出す。父の杖を使って来たが、自分の物を買える年齢になったかと思うと感慨深かった。
「失礼する。」
オリバンダーの店に入ると亭主のオリバンダーが大袈裟におお!おお!と声をあげた。
「なんとも懐かしい方が来たかと思いましたよノーザンバランド伯爵。お父様にそっくりになられたようで。」
「今日は杖を新調したい。父のように仕込み杖に加工してくれ。」
そう言って手にしていたステッキを棚に乗せる。オリバンダーはそのステッキから杖を抜き取るとよく手入れしてありますなと呟いた。
それから利き腕の採寸をして出された杖を振っていくがどうにも良い杖がないらしい。花瓶が割れ棚が倒れ、杖が決まるのが先か店が潰れるのが先かと言わんばかりに店の中はめちゃくちゃになっていた。
「七竈にユニコーンの琴線27cm、頑固で気難しい。」
何本目かの杖を渡されにぎると温かい何かを感じた。ああ、この杖だとあ実感する。ひょいと振れば杖先から優しい光が瞬いた。