03

怒号のような声が飛び、ハリーは反射的に背筋を伸ばした。

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

スネイプの質問にはハリーは目を白黒させた。その様子を見て苦笑いをした。スネイプはハリーが嫌いらしい。

「チッチッチ、有名なだけではどうにもならんらしい。」
最前列のグリフィンドールの女の子が天を衝く勢いで手を開けた。スネイプはそれを無視して続ける。

「ポッター、もう1つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探すかね?」
わからないとハリーは答えた。グリフィンドールの女の子の手が力の限り伸びているのにスネイプには見えていないらしい。

「授業に来る前に教科書を開いてみようとは思わなかった、というわけだな、ポッター、え?」
意地が悪いことをするとセスは思った。教科書は一通り目を通したがベゾアール石のことは教科書の後半に書いてあった項目だったような気がする。マルフォイ達が下品に笑い転げているのを見て頭が痛くなる。自分と同年代の知り合いのいなかったセスにとって彼等に混じって受ける授業は気が重いものになりつつあった。

スネイプの質問責めは終わらない。
「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンの違いはなんだね?」

「分かりません、ハーマイオニーが分かっているようですから彼女に質問して見てはどうですか?」

スネイプはその返しに不快そうに顔をしかめたあと椅子から転がり落ちそうなほど手を挙げていた女の子に座れと言った。
そんな彼と目が合い、セスは眉を潜める。スネイプは貼り付けたような形だけの笑みで言った。

「ノーザンバランド、答えてみろ。」

「はい。まず、アスフォデルとニガヨモギですが、これらを合わせると強力な眠り薬となります。あまりにも強力なため『生ける屍の水薬』とも言われます。」

セスが静かに、穏やかに言葉を紡げば教室からおぉと、声が上がった。さらにセスは続ける。

「ベゾアール石はヤギの胃から取り出す石で解毒剤に使われます。モンクスフードとウルフスベーンですがこれらはトリカブトを指す同じものです。」

「よろしい、流石名前だけの英雄とは違うな。スリザリンに一点を与えよう。そしてポッターの無礼な振る舞いにグリフィンドールは一点減点。

……なぜノーザンバランドの言ったことをノートにとらんのだ?」






どうやら、質問の答えはスネイプのお気に召したらしい。グリフィンドールにとっては最悪の授業だろうがその後も変わることなく進んだ。二人一組で簡単なおできを治す薬を調合することになったのだがどうもお気に入りのマルフォイとセス以内はほぼ全員が注意を受け、教室の雰囲気は張りつめていた。
スネイプは、生徒達達の調合を見て回ったが注意するために歩いていると言っても過言ではなかった。

「マルフォイかツノナメクジを完璧に茹で上げだので皆、見て確認するように。」

あらかたの下処理を終えていたセオドールとセスはその露骨な贔屓に苦笑いをしていたが隣の机の男の子が目にとまり声をあげた。

「君!待ちなさい!」

「えっ?」

その瞬間緑の煙が立ち上りセスとその少年はもろに飛び散った液体を被った。

「ばか者!」
飛んできたスネイプは薬を被りおできだらけとなった2人の元にやってきて怒鳴った。
「恐らく火から下ろす前にヤマアラシの針を入れたのだろう!」

医務室へ行って来いと言われセスは痛みに堪えながら歩き出した。

「ポッター、針を入れてはいけないと何故言わなかった?隣の机のノーザンバランドが気付けて気づけないわけがないだろう。彼が間違えれば自分がよく見えると考えたな?グリフィンドールの一点減点!」

流石に言いがかりにもほどがあるとセスは思ったが泣きながら謝る少年をなだめるのが先決だ。

「ノーザンバランド、医務室から帰ったら私の研究室に来なさい。」
「はい、スネイプ先生。」

最低限の受け答えだけをして急ぎ足で教室を後にした。