Home > Text > Book > List > Page それは神の技が現れるための 優しい悲劇の読み聞かせ 02 [2/3] 「ここが書庫だよマリィ。さぁ、手を出して。触ってごらん」 ディオは、マリィの手を取り書庫の本棚へと導く。そしてゆっくりとその本棚の端までエスコートした。 「ディオ!なんてことなの!まだ終わらないわ!……こんなにも本があるなんて初めてよ!幸せすぎて死んでしまいそう!」 「そんなに喜んでくれたならきっとジョースター卿も嬉しいだろう。ほら、ここに掛けて。 お望みのシェイクスピアの悲劇だ、戯曲を読み聞かせたことなんて無いけれど、 歌うように読み聞かせてやろう。他でもない君のために。」 窓辺のソファに2人で腰掛け静かにディオが本を読み始める。その横でマリィは静かに耳を澄ませた。 「リア王、ウィリアム・シェイクスピア 著 ーーリア王が言う「さぁ我が歓び、末娘の一番かわいいやつ。若いお前の愛を得ようとして、フランスの葡萄と、バーガンディーの牛乳が、競っているぞ。姉たちと同じ三分の一、それ以上を言葉で引き出してみせよ。さぁ、言ってみよーー」 なんて幸せなんだろう。まさかディオにまた本を読んでもらえる日が来るなんて。マリィは本気で死んでもいいとさえ言えるほどの幸福を噛み締めていた。 ディオの優しい声が聞こえる。 鼓動が、息遣いが。触れれば掴めてしまいそうなほど近くにある。見えなくても感じる柔らかな光の下、私の横に確かにいる。 あの湿った暗い部屋の記憶と変わらないままの優しいディオの声。 「ーーコーデリアが言う「何もございません。」 リア王が返す「何も?」「はい、何も。」ーー」 嗚呼、幸せだ。やっぱり、私にとってディオはなによりも大切な人だ。 父や母とはまた別の、私を形作る人。 ディオの声で紡がれるだけで、悲劇すら愛しい詩のように聞こえてしまう。 神様、わたしの願いを聞き届けてくださってありがとうございます。 顔は見えずとも、ディオと再び出会えたことは私にとって何よりも掛け替えのない歓びです。 「少し休憩しよう。お茶を入れてくる。 先程随分とお菓子を食べさせてしまったから、今回はお茶だけにしておこう」 「ありがとう、ディオ。とっても素敵な朗読だったわ……!続きが気になって仕方ないもの!」 ソファのクッションを抱えながらマリィは興奮気味にそう言った。それに対してディオは苦笑いを零しながら本にしおりを挟み込む。 「あんまり褒めてその気にさせるな、休憩を入れないと僕の喉がどうにかなってしまいそうだ。 お茶を入れる間ここで待っていてくれ。何かあったらこのベルを鳴らせば直ぐに戻ってくるから」 ことりと、サイドテーブルに置かれたベルにマリィは頷いた。 「わかったわ、ありがとうディオ」 [前へ][次へ] 15/16ページ [Back] [Home] |