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神が私を殺すまで
不老不死の魔女
[3/3]

それから一ヶ月、セラはDIOをただ屋敷でもてなした。100年の眠りから覚めたばかりのDIOにとってそれは好都合で結合の甘い首やその他の身体ダメージを癒すためには最適な環境と言えた。街が近くにあり、日が当たらず、そして知識を蓄えるために必要な本が山ほどある。随分と様変わりした人の営みを理解していくことは思いのほか面白く、DIOは退屈することなく体を休めた。
「あら、何処かへ行かれるの?」
「街へ出る、日の出前には戻る」
「そう、お気をつけて」
街へ降り、女を漁る。血を飲み干し、乾きを抑え栄養とする。それをただ繰り返していく。首を除くダメージの大半は回復していた。しかし他のダメージはともかく宿敵の体との結合部分である首の接合が甘く、治りが遅い。そのことに対してDIOは多少の苛立ちを感じていた。
(夜が明ける前に屋敷に戻らなくては)
栄養が足りていないのか首筋の痛みと喉の渇きが消えない。まるで飢えているかのような懐かしいとも言える感覚に苛まれる。幼い頃のあの生活を思い出しDIOは眉を顰めた。
(仕方ない、今日は戻るか。なに、時間はあるゆっくりと治していけば良い)
そう結論づけ、DIOは首筋の痛みから意識を切り離し、手にしていた女だったものを投げ捨て屋敷へと戻った。


「おかえりなさい、あら、血が付いていますよ。お風呂の準備が出来てますからどうぞお入りくださいな」
「………何故なにも言わん」
血濡れて帰ったDIOにセラはいつも通り話しかける。なにも追求しないし、興味を示さない。そのため一ヶ月共に過ごしたと言うのにDIOが吸血鬼であることをセラはまだ知らない。
「特に興味はないもの……おかしいのかしら?だって殺してくれるのなら誰でもいいんですもの」
鬼でも狼でもたとえ悪魔だろうと関係ないとセラは言った。
「ならその鬼に血を捧げてみるか?」
DIOは赤く艶めく舌で唇を舐めた。チラリと見えた発達した犬歯にセラは暫く考えた後、何事もなく、頷いた。
「いいですよ、全て差し上げます」
細くさらさらとした黒髪をまとめ細い首を露わにしてDIOへ近づいた。やけに白く艶かしい首筋をDIOはそのがっしりとした男の手で撫でた。少し力を入れればまだゴキリと小気味良い音を立てて折れてしまうだろうそれを2、3度撫でる。
「この変人め、いいだろう、全て奪い尽くしてやろう」
ずっぷりと指が首筋に差し込まれ血が吸い出されていく。もともと白い肌がさらに青白くなりミイラのように干からびていく。
最後の一滴まで搾り取って手についた血を舐めとった。そして今までの血とは明らかに違うその味に驚く。
濃く味わい深いそれは取り込んだ瞬間から体に馴染みダメージを回復させていく。首筋の痛みが幾分か和らいだ。ここしばらく十数人の人間から奪ったどんな血よりも素晴らしい効果だ。
「嗚呼、また死ねませんでした」
むくりと体を起こしたセラは先ほどと変わらない姿でそこにいた。血を吸い上げられか事が全て嘘であったかのように。
「私の血は少しは役に立ちましたか?多少なら治癒効果もありますからどうぞお好きなだけ使ってください。できれば一遍たりとも残さず食べていただければ私も死ねるかもしれませんのでお願いしたいところです」
「一体何者なのだ、貴様」
「そんなつまらない事が気になるので?」
「貴様の事など気にはならんがその力には興味があるな」
「お話しするのは構いませんよ。しかしもう夜更けです、今日はこれでおやすみにいたしましょう」
続きはまた明日とセラは寝室へと消えて言った。

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