マイペース



ようやく六限目の後終礼が終わり、放課後。




帰りの準備をしていて、ふと思い出した。

今日って、園子たちと約束がある日だ。



「千紗〜、行くわよ!」

「あっ、園子!もう、ごめんね急かしちゃって」



園子が大きな声で私を呼び、蘭が肩を竦めながら私の席まで来た。
逃さないぞということらしい。


「ああ、大丈夫、大丈夫」

「いざ!イケメンに会いに!」

「うっわ下心丸見え」


蘭は隣でハハハ…と苦笑い。

園子はそんなにイケメンに会いたいのか……
京極さんがいるのにねぇ。

まあ、それとこれとは別らしいけど。
以前聞いたときに言っていた。




「おや、何処かへ寄るのか?」



じじいがこてんと首を傾げながら聞いてくる。
そんなんやっても可愛くないぞ。

……画にはなるけど。



「喫茶店だよ、お茶してくるの」


「はっはっは、そうか」



心配性のじじいは何をするか分からないから
ちゃんと答えてやると、
そう答えてしれっと付いて来ようとするじじい。

まあ良いけどね、もう付いて来るのは諦めてるから。




「ちょっと千紗、何か言った?」



ギクリ。

園子はこういうところで何故か鋭い。
なんでもないよ、と言って、
私は例のイケメンについて語っていた園子の
話の続きを促した。

園子はそう?と首を傾げた後、
それで〜とまたイケメンについて語り始める。


「……いけめん……」

「変なこと考えてないでしょうねじじい」

「何もないぞ、安心せい」


ほう、いけめんとな。

そう呟いたじじいには咄嗟に釘を刺した。
効いているかは分からないけど。


「それでは、俺もいけめんなのではないか?」

「は?」

「ほれ、綺麗な顔をしているとは思うのだがなぁ」


自分で言うか、それを!

確かに綺麗な容姿なのは悔しいが認める。
でもあなたのそれはイケメンとはまた違うでしょ。


「あなたみたいなのは、美人っていうんだよ」


そう言うと、私の横を歩くじじいは
嬉しそうに口元を隠してそうか?と笑った。






- 11 -

*前次#


ページ: