どこに行っても



__喫茶店ポアロ



ここは、蘭の実家である毛利探偵事務所があるビルの
1階に位置する、落ち着いた雰囲気のいい喫茶店。


のはずだけど……



所々から感じる熱い眼差しを受けているのは、
新しいバイトだという彼。


安室さんというらしい。


「ああ、いらっしゃいませ」

「安室さん! 今日は友達連れてきたのよ!」

「おや、そうなんですか?」


じゃあ席は四人席で良いですかね、
はい、大丈夫です!

そんなやり取りを見ながら、私は言われた席に着いた。


「こんにちは。
僕は毛利氏の探偵としての弟子で、安室といいます。
よろしくお願いします」

「あ、蘭の友人の、千紗です、どうも」


なんで自己紹介し合ってるんだろ。

そう思いながらも軽く頭を下げれば、
彼はニコリと笑って引き返していった。


そんな彼を見送り、三日月のじじいは呟く。



「ふむ、……あの童は、随分とまあ嘘をついているなあ」


当然それを私が聞き逃すはずもなく、
ただ先程と違ってもう室内なので
私はかなり声を小さくして独り言のように尋ねた。


「どういうこと?」

「うん?嗚呼、そうさな……
ま、人の子は欺けど、我らは欺けぬ。
そういうことだ」

「……? そう」


あまりハッキリと教えてくれないじじいを
怪訝な目で見るも、さらりとかわされてしまう。

じっと見つめても、ただ微笑まれるだけ。

このままでは埒があかないので諦めた私は
ため息をひとつ吐いて蘭と園子の会話に混ざった。











(今は分からぬがもし、
あの童が千紗に悪く影響しようものならば……)


(……俺は決して赦さぬ)



三日月が安室さんを今までになく
鋭い目付きで見ていたなんて、私は知らない。






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