ついてくる







「ね、ね、かっこよかったでしょ?」



園子がキラキラとした目で私を見つめる。


いやまあ、確かにイケメンではあったけど……

正直、じじいが呟いた言葉が気になってて
あんまり他に意識がいかなかったっていうか。


そんなこと、口が裂けても言わないけど。



「そうだね〜イケメンだった。
絶対あの安室さん目当てで通う人いるでしょ」


「それがそうなのよね〜。
私たちは蘭がいるから、結構話せるのは特権よね!」


「もー、ちょっと園子!」



園子の歯に衣着せぬ物言いに、蘭が声をあげた。

それにごめんごめん、と軽く返して、
園子は明日も行こうと言う。



「あー、ごめん園子。私はパス」


どうして!?と身を乗り出す園子に、
どーどーと言いながら説明をする。


「私これでも委員長ですからね?
仕事があるんですよ、明日は久々に」


そう、私は一応、用具委員会の委員長をやってる。

基本仕事は月1、2回だしあんまりやることはないけど
学校内の備品の管理をしているのだ。

明日はその点検日。


それを聞けば園子は、
じゃあしょうがないかぁ〜と言って諦めてくれた。


「じゃあ、明日でいいから空いてる日教えてちょうだいよ」


「あーうん、確認しとく。じゃあ蘭、また明日ね」


「うん、明日〜」


そう言って別れようとすれば私は!?と騒ぐ園子に
ちょっと笑いながら、園子もまた明日、と言えば
気をつけて帰んのよ!と言われた。


「はーい。じゃあね〜」









分かれ道を自分の家の方へ進めば、
それまでビックリするほど静かだったじじいが口を開いた。




「千紗、あの喫茶店とやらに行くのは構わんが
あの童には気を付けよ」


「童って、安室さんの事でしょう?
気を付けろったって、何に気を付ければ……、」







そう聞いても、お店の中にいたときと同じく
何も答えてはくれなかった。



ただ、ほけほけと笑うでも意味有りげに微笑むでもなく、

射抜くように私を見つめるその双眸に、
思わず息を呑んだ。





瞳の奥の三日月が、私を見つめる。


有無を言わさないようなそれに、私は頷くしかなかった。








(はは、やや心配のし過ぎやも知れぬが……
じじいは心配してもしきれぬものなのだ、千紗よ)







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