その頃例の少年がこちらです







歩美や源太、光彦に灰原といういつもの面々で
博士のお使いに来ていた俺らは、
もうお約束と言うべきか、強盗に巻き込まれた。


手を後ろ手に縛られて仕方なく大人しくしながら
どうしたらいいか考えていると、
強盗犯の一人がそこの女も来い!!!と怒鳴った。


見るとそこに立ちすくしているのは千紗だった。

思わず目を見張った。


恐怖でか動けなくなっているらしい様子だったが
強盗犯の怒声にこちらへ歩みを進める。


その時、千紗が何処かに何かを
呟いているように見えた。

もっと言うならばまるで
見えない何かと話しているかのようだった。


千紗も座って拘束されるが、
その視線はやはりどこか別の方へ向いていた。






警察との連絡回路が繋がったリーダー格らしき男が
突然千紗を引き掴んで立たせ、その米神に銃を当てた。


マズイ!!!


そう思って麻酔針を構えるが
犯人がなかなか隙を見せないため打つことができない。

タイミングを窺っていると
千紗が小さく頷いたように見えた。




そして次の瞬間








千紗が犯人のアレを蹴り上げた。








……いやいやいや、は?


一瞬何が起こったか理解できなかったが、
蹴ったはいいものの立ちつくす姿にハッとする。


犯人が呻きながらも銃を構えたのを見て、
千紗が身を固くしてぎゅっと目を瞑った。


何やってんだ!逃げろ!!



そう叫ぼうとした時、ガシャンッと何かが音をたてた。







犯人の銃が、真っ二つになっていた。






俺は何が起こったのか分からず戸惑ったが、
千紗はそれを見てホッとしていた。



まるで、そうなると知っていたかのように。








気付いたら他の犯人たちの銃も壊れており、
警察が突入して犯人は無事拘束されて
人質になっていた人は皆助かった。




放心したようにぼうっとしていた千紗に
コナンとして声を掛けて聞き出そうとしたが
はぐらかされたか、流されてしまった。



その後はなんだか話しかけられる雰囲気でもなくなり、
俺は千紗の兄が迎えに来るまで
少し遠くで様子を見るに留まった。




ただ、アイツのもう傍に誰かがいるような、
そんな安心した様子には違和感を覚えた。


これからは少し、注意して見ていよう。



そう思った。






- 19 -

*前次#


ページ: