まさか
あの強盗事件から半月ほど経った。
我が家では相変わらず父が
「千紗、千紗!
今三日月宗近も近くに居るんだろう!?
父さんも見たいぞ!どこだ?
ここか!ここだろう!ハッハッハ!」
とかなんとか言って全く違う明後日の方向を
向きながらやんややんや騒いだり
「千紗、何かお供え物とか要らないのか!?
うん、お供えしよう!何がいいかな!?」
「……うるさい」
「え?うるち米?そうか買ってこなきゃな!」
「耳どうなってんだ」
とか騒いで兄が要らないことをしようとしたりしている。
(聞き間違いについては訂正する気も失せた)
じじいは相変わらずそれをほけほけと見守っているだけ
だけど、あの事件を受けてか前よりもベッタリと
着いてくるようになった。
心配性に拍車が掛かったかも知れない。
そんな私はというと、
一昨日から始まっている皇室御物展にようやく行けると
いうことで朝からそわそわしているお昼休みです。
「千紗〜、今日」
「ごめん今日だけはマジで無理」
「せめて全部聞きなさいよ!」
お弁当を食べながら園子が誘ってくるけれど、
今日はもう御物展なの。
ほら、今日はもうカレーの口だから!とか
あるじゃない?そんな感じだよ。
ぶーぶーと頬を膨らましながらも仕方ないわね……と
諦めてくれる園子に少しだけ申し訳なさを感じるけど、
もうそれどころじゃないよね。
あと2限受ければ!すぐに!向かえる!
さっさと食べ終えた私は持ち歩いているiPadminiで
東都国立博物館のサイトへアクセスし、
御物展のページを開いた。
今日の目玉はなんと言っても桂宮本万葉集と
数ある中から選ばれた太刀、銘国永号鶴丸
通称、鶴丸国永。
昨日ページのトップにババーンと掲げられているそれを見た
じじいはなんだか楽しそうな顔をしていた。
何かが起こる予感がするのは気のせい気のせい。
虫の知らせ?知りませんねそんなもの。
ワクワクドキドキと早くも高鳴る胸をなんとか
鎮めながら、放課後までは真面目に授業に取り組んだ。
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