思わないでしょ


やって参りました東都国立博物館!

待ってろ御物展!!




そう意気込んで一歩踏み入れば
平日だからか混み具合はそれほどでもなく、

思ったよりはサクサクと展示室へ行くことができた。




じじいは時々懐かしいなあ、と呟きながらついて来る。

思わず何度か、はぐれていないかどうか確認した。






「おお……これが鶴丸国永……」




自分の順番が回ってきてガラスを覗き込めば
そこには美しい太刀が一振り、堂々と鎮座していた。




思わず見とれること数分。






視界の端に、白い何かが見えた気がした。






ん?と思った次に、あれ、これ前もあったぞと
思い出して嫌な予感がした。




「おお、久しいなあ」




三日月の声が響く。



「よし……ねえ三日月……うわあッ!?」



意を決してそちらを向けばそこに突然現れたのは
銀の髪をした眩しい誰かの顔のドアップ。


驚き過ぎて心臓が潰れるかと思った。



……いや、誰か、と言ったけど、予想は出来ていた。

はは、まさか……と思いたかったけれど、
フラグになりそうなので止めておく。



それより驚いた時に声を出してしまったので
周囲に怪訝な目で見られていることに気付いてしまい
とてもとても恥ずかしい。



「その様にしては千紗が驚くではないか。

のう、鶴丸よ」




にこにこと楽しそうに言うじじいの言葉に
一瞬息が止まった。


フラグの建設&回収乙、と
自分を恨みながら白い人に目を向ければ、
おお、すまん、と少ししゃがんで目を合わせられた。




「俺は鶴丸国永だ!三日月から聞いたぞ。
君、人の子の癖して俺たちが見えるんだってな!」

「うわ終わった」




こいつは驚いた!と目の前の白が可笑しそうに笑う。


じじいのお喋りのせいで知られてしまい、
これから起こることが簡単に予想できてしまった。





この、底はかとなく三日月のじじいと
同類臭がする白い人はきっとこう言うだろう。




「俺も君について行くことにしよう!」




うん知ってた。

千紗はもう何も驚きません。





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