例のイケメン店員はこちらです
今日も、例の女の子が店に来た。
あれから何度か来ているけれど、
相変わらずどこか上の空で違うところを
見ている以外は変わったところはない普通の少女だ。
特に怪しい行動をするでもない。
俺に接触してくる様子もない。
むしろ、興味がないと言ったほうが良いくらいか。
そう思っていた。
なんだか今日は視線を感じる。
そう思って見れば、例のその子で。
然り気無く、しばらく見ていると、
何もない空間と俺を行ったり来たりしている様だった。
なんだ？
何が言いたい？
何がそんなに気になっている？
そこに、何があるんだ？
俺の頭は疑問で埋め尽くされるが、
それは露とも顔に出さずに装う。
マスターが店を閉めた後、彼女が来ていた日は
その視線が向いた辺りを探ってみているが、
隠しカメラがあったり盗聴器があったりする
訳でもなく、本当に何もない。
と、彼女の口がそっと動いた。
つるまる
みかづき
そう言った。
読唇術は心得ているから、間違いない。
何かの暗号か？
それとも何か関係がある言葉なのか？
何も解らないが、新しく出てきた情報だ。
とりあえず俺はそれを後で調べてみる事にした。
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